【ウクライナ戦争】日本人記者が見たマリウポリの現実 残った市民がロシア支配下で生きるそれぞれの理由

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今は平和

 町に出て会話をすればウクライナ派の市民がいるのではないかと思っていたが、そのアテは外れた。実際は、どこの国になってもマリウポリで生きていくと決めた人、ウクライナに恨みがある人、ロシアのほうがまだ見通しが明るいと考える人など、それぞれがそれぞれの理由で現状を受け入れているように見えた。

 そして、そうでない人は、戦争の序盤に町を離れ、戻って来てはいない。例えば、ロシアを支持する女性は、自宅が全焼したため知人の家に身を寄せているが、知人本人はマリウポリにはいない。その人は、マリウポリが「無血開城」してまたウクライナの一部となった時に戻ってくる、それまで住んでいて構わないと話している。2人は全く違う政治的意見を持っているが、それはそれとして友情は続いている。また、信頼のおける人に不動産を管理しておいてもらわないと、誰かが勝手に住み着いたり、結果として物件を失ってしまったりという懸念もある。

 筆者がマリウポリに滞在していた間、市内に2回砲撃があった。しかし、それでもマリウポリの人たちは、今の状態を平和だと考えている。会話の端々に「平和になってから1年半が経つ」とか「もう戦争は二度と体験したくない」といった表現が出てくるのである。戦争そのものはもちろん続いているのだが、マリウポリの人々にとって戦争はとりあえず終わったことになっているようだ。

デイリー新潮編集部

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