車内タバコ、殺人的ラッシュ、垂れ流し式トイレ…「ふてほど」で昭和を懐かしむ人はいても「鉄道」は全く別と言える理由

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通勤五方面作戦

 こうした混雑は“殺人的ラッシュ”と形容され、社会問題化した。そして、政治も混雑を解消するために動き出す。

 1965年、中村寅太運輸大臣(当時)が朝ラッシュ時の新宿駅を視察。中村大臣は中央線ホームで乗客を列車内に押し込む駅係員の様子を目にして、「あえて“マンガ”だと言おう。凄まじい“マンガ”だ」と記者会見で語った。

 中村大臣の視察後、運輸省は時差通勤を呼びかけて混雑の緩和を目指した。ただ、それだけでは実効性に乏しく効力を発揮しなかった。

 同年、国鉄は東海道本線・横須賀線、中央本線、高崎線・東北本線、常磐線、総武本線で通勤五方面作戦と称する輸送力強化策を開始する。通勤五方面作戦は加減速に優れた新性能電車を大量に投入することで運転本数の大幅増を実現し、それと並行して線路増にも着手。線路増により列車の運転本数も増える。それによって、混雑の緩和を図ろうとした。

 国鉄が取り組んだ通勤五方面作戦は大規模な工事を伴うこともあり、即効性には乏しかった。それでも歳月とともに効果を発揮していく。

 前述したように、2022年度における混雑率は200パーセントを超えることはなくなり、1965年と比べて混雑率は大幅に改善した。

車両でタバコ

 当時の混雑は壮絶だったが、そんな車内でもタバコを吸う人がいた。車内でタバコを吸っていると表現すると、マナー違反の不届者というイメージを抱くかもしれない。しかし、当時の成人男性は喫煙率が高かった。それを踏まえれば、新幹線や特急という長距離列車の座席でタバコが吸えることは当たり前だった。

 クロスシートやボックスシートの車両には、窓下に灰皿が備え付けられていたことを覚えている人も多いだろう。

 ただ、驚くことに昭和期には通勤型車両のロングシートでもタバコを吸う乗客は多かった。通勤ラッシュの混雑時にタバコを吸えば、タバコの火で服が焦げることや灰で汚れるといったトラブルが頻発することは容易に想像がつく。服が焦げるぐらいならまだしも、最悪の場合は火災になることもあるだろう。

 当時から鉄道事業者は通勤車両を禁煙にし、それをアナウンスしていた。しかし、それらを無視してタバコをふかす利用客は多かった。

 混雑する車両でタバコを吸う人がいるぐらいだから、通勤ラッシュ時に駅のホームでタバコを吸う人はもっと多かった。多かったというよりも、当時は当たり前だった。

 列車内・ホームでの喫煙は2003年に健康増進法が施行されたことで分煙化が進み、少しずつ消えていく。それでも、2010年前後までは社会の変化に対応できておらず、ホームから線路に目を向けるとタバコの吸い殻が大量に落ちていることは珍しくなかった。

 2024年春のダイヤ改正で近畿日本鉄道が特急列車の喫煙車を廃止し、そのほかJR東日本や東海、西日本が運行する新幹線や特急の車内に設けられている喫煙ルームも続々と廃止される流れになっている。車内からタバコのにおいは消し去られ、線路内に吸い殻が大量に捨てられている光景は過去のものになった。これも時代の流れによる変化だろう。

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