「自民党の“アキレス腱”が…」 下村博文氏の政倫審での発言が注目される二つの理由
自民党派閥の裏金事件に幕を引こうと、衆院政治倫理審査会(政倫審)に臨んだ岸田文雄総理の思惑は大方の予想通り不発に終わった。
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政治部デスクが指摘する。
「野党側にも独自の追及材料がなく、新事実は示されずに終わりました。そんな攻めあぐねる野党が新たに目を付けたのが、安倍派の下村博文元文科相です」
下村氏は平成30年1月から翌年9月まで、派閥の事務総長の座にあった。パーティー券収入の還流について“関与していない”と明言してきた彼に、野党が期待を寄せるのは二つの点に関する答弁。いずれも自民党の“アキレス腱”だ。
「安倍晋三元総理が、令和4年4月の幹部会で還流をやめるよう提起したものの、死去後の8月には幹部会が廃止の是非を議論したとされています」
政倫審で西村康稔前経産相は“結論は出なかった”とする一方、塩谷立前座長は“今年に限って継続するのはしょうがないという話し合いがされた”と答えた。
「下村氏はその2回の幹部会に出ていた。つまり、西村、塩谷両氏の証言が食い違う還流再開の経緯を知っているとみられる。回答次第でいずれかの発言が“虚偽”と見なされかねず、そうなれば国民の政治不信はより高まるでしょう」
野党が期待する“告発”
さらに野党は、こんな“告発”も当て込んでいる。
「塩谷氏は裏金作りに関して“二十数年前から始まったのではないか”と答弁した。事実なら、当時、派閥の会長だった森喜朗元総理の関与も疑われます。派閥の“オーナー”だった森氏を引っ張り出せれば、野党には大きなポイントになりますね」
背景には永田町でも知られた二人の不仲があるとも。
自民党幹部が肩をすくめる。
「安倍さんの死後、下村さんは派閥の集団指導体制から外された。これは彼を蛇蝎の如く嫌う森さんの意向を受けたものです」
二人の断絶は、東京五輪の招致の時期までさかのぼる。
「文科相だった下村さんは、建設費の高騰を理由に新国立競技場の建設見直しに踏み切った。これに森さんが激怒したのがきっかけです。怒りが冷めない森さんは、派内で安倍さんの後任会長選びが進められていた昨年8月、北國新聞のコラムで“下村さんから『何とか私を会長に』と土下座して頼まれた”と暴露しました」
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