中国の若者が、老人ホームに入居、AIと恋愛、タイへ脱出…中国経済悪化の背後に社会への絶望感

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「恋愛、結婚、子供、家」を諦める

 個人消費を牽引する若者の節約志向が高まれば高まるほど、中国経済のデフレ化が進んでしまうだろう。

 中国では3年ほど前に、他者との競争を諦め、シンプルな生活を選択する、いわゆる「寝そべり族」が話題となったが、バブル崩壊でこの傾向が強まっている。

「四不青年」という四字熟語が昨年の流行語となった。この用語が意味するのは、恋愛、結婚、子供、家を諦める若者のことだ。自己防衛のために「4つの希望」を断念せざるを得なくなった若者に対して多くの共感が集まったと言われている。

「貧すれば鈍する」ではないが、日々の生活を暮らすのがやっとの中国の若者にとって結婚は「高嶺の花」だ。2022年の婚姻件数は前年比11%減の683万組と9年連続で減少し、ピークの2013年からは半減した。

 気がかりなの、男性よりも雇用環境が恵まれているとされる女性の間で「非婚主義」が広がっていることだ。「結婚は女性に不公平な制度だ」との不満がその背景にある(3月8日付ロイター)。

 恋愛離れも進んでいる。この傾向は女性に顕著であり、「現実の交際は面倒くさい」と称して人工知能(AI)との恋愛に夢中になっているという(2月13日付独ドイチェ・ヴェレ)。

 若者が結婚や恋愛に消極的になっていることは、少子化対策に本腰を入れ始めた中国政府にとって大きな障害だ。

絶望から「自由」を求めてタイへ

 国民の海外脱出が活発化していることも心配の種だ。

 中国から米国に渡る移民の急増が問題になっているが、若者の間ではタイへの移住がブームとなっている。ゼロコロナ対策の長期化など抑圧的な政策をとり続けた政府や「過酷でやりがいのない仕事」に絶望した若者が「自由」を求めて陸続きのタイに押し寄せている(3月4日付AFP)。

 国民の海外脱出の急増に危機感を覚えた中国政府は規制の強化に乗り出している(2月20日付ZeroHedge)が、祖国を離れる中国人の流れを止めることはできないだろう。

 若者の絶望がもたらす少子化と海外流出によって、中国の人口減少は今後さらに加速する可能性が高いと言わざるを得ない。

 人口動態は経済成長の鍵を握る最重要ファクターだ。この点が好転しない限り、中国経済が低迷から脱出することは不可能なのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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