日活ロマンポルノはなぜ今も根強い人気があるのか

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女性の前向きな生きざま

 日活はロマンポルノを「一回興行三本立て」「上映期間二週間」(正月と盆は一作品の上映時間を延ばして二本立て)を厳守した。厳守せざるを得なかったと察する妥当な状況を背負ってだ。問題は封切りの時期で、私は世情の不穏を呼んだ先の衝撃的な事件(連続女性誘拐殺人)解決の数か月後の人心の隙間を利用したと感じた。

 先行する東映は、「泣かせる」「笑わせる」「ハラハラさせる」(創始者マキノ光雄)で時代劇全盛(片岡千恵蔵・萬屋(旧姓中村)錦之助ら)を築き、やがて、映画内容に「固唾を呑ませる」を加えて任侠路線(鶴田浩二・高倉健・藤純子ら)を突っ走り、そして、「(やくざ稼業の世界を)覗き見る」を演出して仁義なき戦いシリーズ(菅原文太ら)で一世を風靡した歴史を持つ。だが日活には男性路線(石原裕次郎・小林旭ら)が終焉すると、世間に訴える映像の得手はなかった。それもあり、「ピンク映画」に傾倒せざるを得なかったのだと考える。

 日活ロマンポルノ制作は「起承転結を簡略化し、一編は70分以内に完結する」「10分間に一度の性行為シーンを入れる」「モザイク・ボカシは極力排除する工夫をする」「10日間以内に撮影を完了し、製作費は1000万円以内に収める」というルールがあり、私は勝手にこのスタンスを「ロマンポルノ制作の四原則」と呼ぶ。

 日活ロマンポルノの名称は東映が名乗る「東映ポルノ」を巧みに援用し、「愛のロマン(セックス描写)」で独自色を活かす目論見で「ロマンポルノ」と名付けたと巷間、聞くが、仔細に内容を検討すると、男女の立ち位置の逆手の虚実性(ストーリーテリング)に気づかされる。要するに女性の前向きな生きざまの現実的な描写だ。

 例えば、ロマンポルノのデビュー作「団地妻 昼下がりの情事」は、白川和子が演じる欲求不満の平凡な主婦が不倫を行うものの、肉欲の果てに感じる本音は男を手玉にとる「オンナの快感」であり、「オンナの復讐劇を演じる痛快さ」が作品の出色さを際立たせる。

 初期の作品で私が推奨するのは、「秘・女郎市場」(1972・監督・曽根中生)。主演の片桐夕子の圧倒的な「女の自立」の演技は必見。次いで、関根(高橋)恵子主演「ラブレター」(1981・監督・東陽一)は、若い愛人に翻弄される老作家の情けなさを描く。宇都宮雅代主演「危険な関係」(1978・監督・藤田敏八)はインモラルな男と女の非日常的な恋愛劇だが、最後は女が主導権を握る起承転結が絶品に仕上がる。

 他にも女優陣は豊富だ。人気筆頭の宮下順子、サド的な倒錯演技の谷ナオミ、思春期の娘役を演じた美保純等は日活ロマンポルノを彩る華やかなトップスターだった。

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