「親友の結婚式で歌ったら新郎側はドーンと引いちゃって」 平松愛理が語る「部屋とYシャツと私」誕生秘話

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曲調にもこだわりあり。発売当時は伸び悩むも、異例のロングヒットに

 本作は、1番から2番、3番と楽曲が進むにつれ、まるでおとぎの国で扉が開いていくように演奏がどんどん変化していくのも不思議で面白い。歌詞だけが取り上げられがちだが、一度じっくり聴いてみてほしい。

「この曲は、ディズニーランドのアトラクションからインスピレーションを受けて、“大きな箱の中で人形たちが動いている”というイメージがあったんです。だから、“おもちゃ箱が次々と開いていくようなイメージでアレンジしてほしい”とお願いしました。それだけ、こだわりのある作品だったんです。

 でも、アルバム『MY DEAR』をリリースする際の取材では、記者の方々から『部屋とYシャツと私』に関する質問はほとんどなくて……。ひとりだけ尋ねてくれた方も、“ワルツですよね”くらいの軽い反応でした(笑)。また、ライブでもセットリストに入れて歌っていましたが、客席からも、最初はそんなに反応がなかった。だから、“私は間違っていたのか……”ってガッカリした記憶があります」

 しかしその後、ラジオや有線放送で評判となり、1年以上かけてゆっくりと上昇し、92年3月には、収録アルバム「MY DEAR」がTOP100に再浮上! 同月にシングルとしても発売することになり、前述のロングヒットとなったのだ。発売前のレコーディングが実現するまでの経緯も、発売後にミリオンセラーとなるまでの経過も、あまりにドラマティックで、本人いわく“どこから女性ファンが増えたのかもわからない”とのこと。

「部屋とYシャツと私」アンサーソングは夫婦の距離感の変化に注目

 そして、’19年には、まったく同じ曲にその後の歌詞を乗せた「部屋とYシャツと私 ~あれから~」をリリース。こちらはオリコン最高69位、TOP200内での累計売上も約0.1万枚にとどまっているが、Spotifyでの人気は平松の中で第4位、累計再生回数は23万回以上と、大きく広がっている。確かに、“あの歌の夫婦、あの後どうなったのだろう……?”と気になるライトなリスナーは多そうだ。

「この数字を見て、“うわっ、ビックリした! こんなに聴いてくださっているなんて!”と(ここだけ関西弁のイントネーションになるほど、よほど驚いた様子)。この曲も頑張って作ったのですが、世間にはあっさりスルーされたと思っていたので(笑)。

 もともと周囲から、「『部屋とYシャツと私』のアンサーソングを作って」と長いあいだ言われていたんですよ。でも歳月を経ないと、夫婦の変化なんてわからないですよね。それで、女性の気持ちがどう変化するのか、じっくり時間をかけて理解して、デビュー30周年のタイミングで出すことにしました」

 本作では、前作で浮気した夫に対し ♪毒入りスープで 一緒にいこう~♪ と歌っている部分が、 ♪特製スープ ひとりで逝って~♪ に変わっている。これも、夫婦の距離感の変化を象徴しているようだ。

「この曲でも、作詞する際に周りをリサーチしましたね。私個人が実感したことも、 ♪トキメキは減っても 女の勘は衰えない♪ など、歌詞に取り入れています(笑)。1番の ♪飲みすぎて帰っても あなたのご飯はあるけれど 食べたらきちんと洗って お皿と私の機嫌をなおして♪ というのは、せっかく台所をきれいにしたのに、飲み会で遅くに帰ってきて又台所を散らかすなんて……。という周囲の意見を反映していますし、 ♪あなた浮気したら 私は子供を守るから♪ の部分もそうですね。原曲と、この『~あれから~』は、同じメロディーに乗る歌詞が、新婚の時期とその何十年後で対になるように書いているので、そのあたりも楽しんでもらえたらうれしいです」

「部屋とYシャツと私」は、90年、92年、04年、12年の各録音版、そして「~あれから~」と、さまざまなバージョンがあるので、この際、サブスクなどで聴き比べてみると、それぞれの味わいを楽しめそうだ。

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