なぜ佐々木麟太郎「スタンフォード大」進学は“やっかみ”を呼ぶのか 日本人を思考停止にする「和病」の正体

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佐々木と和病

 これがもっとも表れたのがコロナであるが、以下の箇条書きが日本人の特徴を表した。それを示したうえで、佐々木に対する「和病」的な意識を紹介しよう。

・自分は自粛しているのにしないで遊んでいるヤツは不届き者
・高齢者を守るために協力しない子供、若者は不届き者
・マスクをしない者は一切の権利を与えないでいい。入店禁止、飛行機から降ろすぞ
・ワクチンを打たない者は公衆衛生の敵で思いやりがないので、差別や解雇は当然のこと
・大多数のワクチンを打った善良なる皆様には特典をあげますよ~
・専門家、メディア、政治家が言ってることは正しい。そこに疑問を挟む者は不届き者
・海外から人が入ってくるのはダメ。清潔な国・日本に不潔の国の人が入ってきたら状況が悪化する
・コロナが無事五類化されたのは、皆が頑張ってマスクを含めた感染対策をし、ワクチンを世界有数レベルで打ったから
・時短営業をせず酒類を提供する店はペナルティ。お上の言うことを従順に聞く店は優良店。認証シールあげるよ~

 では「佐々木と和病」はどんなものか。

・普通の日本人には到底払えない金額なのに「野球が得意」というだけでアメリカの名門大学に入れてズルい
・円安で普通の日本人には海外旅行すらままならないのに、海外留学ですか……
・大学という場所は本来勉強するために入るためのもの。勉強して入る学生があなたのせいで一人落ちていたらどうするのですか
・これまで日本球界に育ててもらったのに、プロ志望届を出さずそのままアメリカ行くあなたは売国奴
・あなたより優れた選手が「プロ野球入団」→「実績作る」→「ポスティングor海外FA権獲得」というキチンとした段階を経て海を渡ったのに、あなたはそれをすっ飛ばして卑怯

イチローも叩かれた

 こうなるのは、海外に出ていけるだけの財力・才能・ガッツ・人脈・行動力を持つ人間に対しての妬みが根底にある。それが国内に残る人間の団結を促し、佐々木に対する心無い声に繋がるのだ。日本に対して批判的なこと、たとえば「アメリカは目立つ人間ほどエラい、という考えがある」などと言ったら「じゃあ、日本に帰ってくるな!」の合唱になるだろう。

 過去にこれがよく表れた人物がまずは3人いる。野茂英雄、イチロー、田澤純一だ。野茂は近鉄バファローズ5年目シーズン終了後、メジャー挑戦を表明。近鉄球団ともモメたことに加え、FA制度導入2年目でベテラン選手でさえ自由に移籍できなかった時代が続いたことから「わがまま」と大バッシングを喰らった。ドジャースへの入団が決まっても「あんなヘンな投げ方は通用するわけがない」と、メディアも野球ファンもバッシングをした。だが、1年目に新人王を獲得すると途端に手のひら返し。「やっぱり日本の野球はすごい!」となったのである。
 
 イチローも叩かれた。「野茂や長谷川滋利のようなピッチャーは通用するが、打者が通用するわけがない。イチローはパワーがなさすぎる」というのがその理由だ。だが、イチローはルーキーイヤーに打率.350を達成。最多安打・盗塁王・新人王のタイトルを獲得したのだ。

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