僕は“愛人の子”で両親に絶望していた…今度は自分が不倫して、人生の正念場という49歳男性が明かす“苦悩の核心部分”

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変わらない“逃げ癖”

 社内では肩で風を切って歩いていると陰で言われていたらしいが、彼はそんなことに気づかず、日々を懸命に生きているだけだった。

「だけど成果が見えたら、急につまらなくなってしまったんですよ。それでそこは他の人に任せて、僕はまた別の社内ベンチャーに取り組んだ。飽きっぽいと周りからは言われたけど、チャレンジするのが楽しいだけで維持するとなると急に嫌になってしまう。逃げたくなるんですよね……」

 生きることそのものから逃げようとは思わなくなったが、何かあると逃げたくなるのは変わらなかった。

 そんなとき親しくなったのが、同じ社内起業をしている5歳年上の由依子さんだった。

「なぜか僕の心と体をガシッと受け止めてくれたんですよね。受け止めたのか抱え込んだのかわからないけど、とにかくものすごい包容力だった。僕が不安定になっても彼女は慌てず騒がず。社内で別のベンチャーを立ち上げたいと言ったら、『このくらいの数字まで業績が上がったらやっていいかって上司に聞けばいいじゃん』って。具体的な数字を達成できたら、あとは任せたと言ってもいいけど、発展途上で自分だけ降りるのは違うと思うと。世の中はこういうものだよ、こう思う人もいるよということを教えてくれたのは彼女ですね」

 彼女を失ったら自分の人生の指針がなくなる。そう思った彼は、恋人でもなかった彼女にプロポーズ、由依子さんも「いいよ」と言ったというから興味深い。

後編【息子は引きこもり、娘は万引きして補導…家庭からの逃避で、20歳年下女性と不倫に走った49歳夫がいま、逡巡している理由】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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