【グリコ・森永事件40年】最後まで残った江崎社長に着せられた“黒のオーバー”の謎
犯人グループには子供がいる?
1991(平成3)年夏、大阪、兵庫、京都など「グリコ・森永事件」に関係する各府県警による合同捜査会議が開かれた。会議を主導したのは警察庁だった。
「それぞれの警察が持っている情報を初めて公にした場ではなかったかと記憶しています。犯人が終結宣言を出し、動きを止めてから6年。一般からの情報提供も少なくなっていました。もちろん、捜査は継続していました。その中でも特に、複数名による犯行であることを念頭に、疑わしいグループや人物への集中捜査が中心になっていました」(警察庁OB)
各府県警による、警察庁捜査1課への報告書(捜査資料)が作成された。滋賀で遺棄されたライトバンにあったカークリーナーの内袋から見つかった電子部品の破片(EL)への捜査。「キツネ目の男」を追って免許証やパスポートを調べる。脅迫状作成に使われたパンライターの追跡など、細かい項目が書き込まれている。特に目を引くのは「疑わしい」と思われる人物と、その周辺の関係者、それをチャートにした人物相関図だ。
「一連の事件で、犯人からの脅迫電話に男児の声と女性の声が使われました。この“声”を突き止めるために、捜査本部ではある児童の声を録音・鑑定しています。なぜ、この児童が浮上したかというと、両親と共に犯人グループのメンバーではないかと疑われたからです」(前出・元記者)
捜査資料では、声の主と思しき小学校6年生の男児の声を3回にわたって録音し、科学警察研究所に鑑定を依頼したという。「声の高さが異なり鑑定できなかった」とあるが、男児の通う学校の校長や、担任にも話を聞いていることも記されている。
「女性の声の捜査ですが、女性がリラックスしてあれこれ話をするのは髪を切っている時、つまり美容院にいる時ではないかと見られていた。一連の事件で、現金受け渡しの現場設定や、犯人の足跡が多かった大阪の北摂地域や京都南部の美容院をくまなく回り、脅迫テープの声を聞かせて似ている人を知らないかと、捜査員が聞き込みしていました」(小田桐氏)
同様の捜査は「キツネ目の男」を追う捜査でも展開されており、捜査資料にも「京都南部および北摂地域の理髪店、眼鏡店について、目撃捜査員による聞き込み捜査を実施中」とある。
しかし、こうした地道な捜査の積み上げも実を結ぶことはなかった。
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