NHK「のど自慢」は伴奏をカラオケにして1年…担当プロデュ―サーが明かす“予想外のメリット”

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クオリティの差

 伴奏をカラオケにすると、当初は予想していなかったメリットも生まれた。友杉氏は「番組の機動力が増した」と言う。

「ステージ上でバンドの皆さんが演奏するスペースを用意する必要がなくなったので、セットがコンパクトになったのです。これまで手を挙げてくださった自治体の中には、会場の狭さがネックになって断念したところもありました。ところがカラオケに変えると、比較的狭い会場でも開催が可能になったのです。お邪魔させてもらう自治体の数が増えたことは、とても良いことだと思っています」

 その一方で、カラオケ伴奏のクオリティ、特にクオリティの“ばらつき”について考えさせられる機会も増えたという。

「最近の楽曲のクオリティは図抜けています。“本人演奏”という音源もあるほどで、配信などの音源と全く同じものがカラオケでも演奏されるわけです。予選会に挑戦される皆さんも、カラオケボックスなどで“本人演奏”の音源で練習すれば、予選の対策は完璧ということになります。ところが、カラオケの歴史は長いので、例えば1980年代に制作された音源もあります。一定のクオリティは確保されているのですが、何しろ最新の楽曲は原曲を完璧に再現しているので、比較するとどうしても差を感じてしまうのです」

弾き語りは大歓迎

 往時の歌謡曲などは、どうしても“聴き劣り”する音源で本番を迎えることもある。番組スタッフが音源をブラッシュアップすることも多いが、やはり限界はある。予選会で古い音源が歌われているのをカラオケのメーカーが確認し、音源の再制作を検討しているケースもあるという。

「ひょっとするとカラオケ音源の議論で“盲点”になっているのかもしれませんが、実はアカペラや楽器の弾き語りは禁止していません。私たちにも意外なのですが、『カラオケの伴奏なしで歌いたい』という応募は非常に少ないんです。先日の放送では、お父さんの形見というギターを手に持って、あいみょんさんの曲を歌った女性がいました。とても上手だったので合格になったのですが、ギターは弾かれませんでした。さすがに楽器の音を拾う専用マイクを準備する時間は確保できません。ボーカルマイクだけになりますが、それでよければ弾き語りのエントリーは大歓迎です」

 カラオケ音源がない民謡だったため、予選会に三味線と尺八の奏者に来てもらったこともあったという。

「民謡のエントリーは本当に減りました。今でも一定数の応募がある地域もありますが、私が勤務していた名古屋では皆無でした。それでも私が立ち会った予選会で、民謡を歌ってくださった方は何人かいらっしゃいました。ただ残念なことに、本選には通らなかった。民謡でもカラオケ音源は豊富にあるので可能性は低いかもしれませんが、日曜の『のど自慢』で、三味線や尺八といったお囃子の生演奏で民謡を歌ってもらうことが実現すればいいなと願っています」

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