NHK「のど自慢」は伴奏をカラオケにして1年…担当プロデュ―サーが明かす“予想外のメリット”

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 前編【1人の出演者から意外な要望が…NHK「のど自慢チャンピオン大会」、生バンド復活の舞台裏】からのつづき──。NHKは2023年4月、「NHKのど自慢」(NHK総合テレビ、ラジオ第1、NHK-FM)の伴奏が生バンドからカラオケ音源に変わった問題について触れ、「今回、採用したことで、この仕様は当面続きます」と説明した。(前後編の後編)

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 昨年4月2日の放送回から、初めて伴奏が予選から本番まで全てカラオケ音源となった。「生バンド廃止」が発表されると、特にネット上では批判の声もあがった。全国紙の社会面にも記事が掲載されるなど、まさに国民的な議論が巻き起こったことは記憶に新しい。

 デイリー新潮もNHKに取材を依頼し、2本のインタビュー記事を配信した(註1、2)。コンピューター音源の多用により生バンドでの伴奏が難しくなっていることや、特に地方で生放送に対応できる凄腕のミュージシャンが減少していることなどを伝えた。

 あれから1年が経とうとしている。少なくともネット上では、カラオケ伴奏を批判する投稿はめっきり減った。制作サイドからの「カラオケ化から1年」はどのように見えたのだろうか。番組プロデューサーを務める、第3制作センターの友杉徳孝氏に話を聞いた。

「『伴奏をカラオケにします』と通達を受けたのは、2022年の12月でした。当時、私は名古屋放送局に勤務しており、日曜の『のど自慢』の放送に関わっていました。リモート会議でカラオケ化の説明を受けましたが、最初の率直な感想は『本気でそんなことを言っているのか!?』という疑問でした。しかし、説明を聞くにつれ、私が予選会で感じていた問題点と合致するところが多々ありました。特にコンピューターを多用した、いわゆる“打ち込み系”の楽曲だと、生バンドでは再現できないという指摘は、私も実際に体験したことがありました」

「抗議」から「ご相談」へ

 毎週の放送では数千通の応募が寄せられ、それを200組に絞り込んで予選会を行う。カラオケ化の前は200組が歌う200曲の音源や譜面を集め、バンドが生伴奏を行っていた。

「生バンドの利点はたくさんありました。一例を挙げると、長いイントロの曲でも歌い手と呼吸を合わせながら短くすることが簡単でした。カラオケにも“イントロスキップ”の機能が用意されていますが、スキップすると歌えない方が多いのでほとんど使いません。たとえ打ち込み系の楽曲でも何とか再現しようと、バンドの皆さんは頑張ってくれていました。それでも予選会で『こんな曲じゃない』というリアクションの参加者はいらっしゃいましたね。実際、バンドによる伴奏が映える曲もあるのですが、映えない曲があったのも事実です」

 リモート会議で説明を聞くと、最終的には納得した。移行にあたってはコロナ禍の際、ミュージシャンの感染防止などの配慮が必要となり、予選会だけカラオケを使った経験があったのは大きかったという。

「ゼロからの出発というわけではなく、カラオケを使った経験はありました。そのため『こんな具合になるのかな』というシミュレーションはできました。それもあって、カラオケ化への移行自体はスムーズだったと思います。あれから1年が経ち、司会を廣瀬智美アナと二宮直輝アナの2人が週替わりで務めることも含め、リニューアルが定着してきた手応えを感じています。カラオケの問題に関しても、“抗議”ではなく“ご相談”が増えました。例えば『イントロが長い曲、間奏が長い曲はどうするんですか?』というご質問は多く、これには『予選の時はそのまま歌ってもらいます』と回答します」

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