1人の出演者から意外な要望が…NHK「のど自慢チャンピオン大会」、生バンド復活の舞台裏

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

生ドラムロールの迫力

 入賞者が発表される際、ティンパニーやドラムのロールが行われた。もちろん、これも生演奏だった。用意した音源を流すのと比較すると、全く効果が違ったという。

「ティンパニーやドラムの録音を用意し、流す場面が来たらスタッフがボタンを押すというのは可能です。それでも、会場の空気を演奏者が感じ取りながら叩くと、やはり音色が違うんです。アナウンサーの実況も生の臨場感がありますし、出場者の皆さんの様子も生で伝わってくる。観客の皆さんも一緒になってドキドキしている空間で流れるドラムロールは、用意した音源とは全く違うのだと改めて痛感させられました」

 どんなスタッフでも、生放送は緊張する。チャンピオン大会の場合、そもそも出場者が全員揃うのかという心配もある。リハーサルが無事に終わっても、本番の最中に何かトラブルが起きるかもしれない。大きな災害が発生すれば、番組の放送は中断される。

「生放送の心配事やプレッシャーを除けば、僕もディレクターも『放送日が楽しみだね』と言い合っていました。これほど歌の上手い13組を視聴者の皆さんに見て欲しくてたまらなかったですし、『誰が優勝するのかな』と僕たちもワクワクしていました。出場者の皆さんが歌にかけている情熱の凄さは、きっと視聴者の皆さんも伝わるという手応えを感じていましたから、放送日が待ち遠しかったんです」

Xで白熱した議論

 チャンピオン大会はコンテストの要素が強いことは前に触れた通りだ。そのため、年によっては出場者が緊張してしまうこともあったという。だが、今年の13組は常に和気藹々とした雰囲気だったそうだ。

「スタッフが必ず『優勝したから偉いとか、そういうことは絶対にありません』と説明しています。優勝したからといって、プロデビューが約束されているわけではありません。そもそも誰がチャンピオンになってもおかしくない顔ぶれでした。Xの投稿も改めて通読すると、『あの人がチャンピオンだと思っていた』という意見が目立ちました。それも当然だと思います。スタッフでさえ様々な意見がありました。『あえてラジオで聴き、皆さんの歌の上手さに驚いた』という投稿もありましたが、本当にその通りです。今年は出場者の皆さんが互いを応援するという気持ちが前面に出たパフォーマンスとなり、それが何より素晴らしかったと思っています」

 コロナ禍も終息したことで、NHKホールには全国から観客が駆けつけたことも盛り上がりに一役買った。中には、自分たちが出場した放送回で誕生したチャンピオンに声援を送るため集まった「応援団」もいたという。

 後編は友杉氏に、「カラオケ化から1年が経過した『のど自慢』の現在」について語ってもらった。

 後編【NHK「のど自慢」は伴奏をカラオケにして1年…担当プロデュ―サーが明かす“予想外のメリット”】へつづく。

註1:NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る(2023年5月12日)

註2:NHK「のど自慢」 番組責任者が明かす“予選会の知られざるカラオケ活用法”(同)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。