1人の出演者から意外な要望が…NHK「のど自慢チャンピオン大会」、生バンド復活の舞台裏

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大変な選考

 一方、チャンピオン大会は「出場者の中から最も歌が上手い人を決める」というコンテストとしての要素も強い。

「毎週放送されている『のど自慢』と比べると、チャンピオン大会は全く別の空間です。歌の上手い人しか出場しませんし、会場は『紅白歌合戦』が行われるNHKホールです。照明も音響も何もかも、プロの歌手の皆さんが出演される番組と同じクオリティで放送します。実際、スカウトされてプロに転進する方もいらっしゃいますから、一種の登竜門という位置づけも可能です。こうなると豪華な演出が必要なのは言うまでもなく、生伴奏が相応しいという結論に達するわけです」

 チャンピオン大会では準備期間を確保できることも大きい。毎週放送されている「のど自慢」の場合、土曜に予選会を開き、翌日の日曜が本番だ。

「このスケジュールだと、バンドによる再現が難しい曲が出てきます。一方のチャンピオン大会は時間に余裕があります。制作の経緯を説明すると、1年間の応募総数は3万3000通を超えます。毎週日曜の放送で20組が出場し、年に40組を超えるチャンピンが誕生します。これを13組まで絞り込まなければなりません。選考は本当に大変で、10人以上が携わります。全員でチャンピオンの歌をVTRで見直し、“オーディション”を行うわけです」

デモ音源の制作

 制作統括を務める友杉氏をはじめ、番組のプロデューサーでも40代や50代が多い。この顔ぶれで審査を行うと偏りが生じる懸念がある。そこでディレクターやスタッフなど様々な関係者に声をかけ、老若男女のバランスを考慮して“審査員”を決めるという。

「13組の皆さんに『チャンピオン大会の出場が決まりました』と連絡したのが昨年12月の下旬でした。原則として、チャンピオンに選ばれた時と同じ歌を歌ってもらいます。曲は決まっているとはいえ、曲のサイズやアレンジを決める作業が必要です。普段の『のど自慢』は、チャンピオンに選ばれた人も途中で鐘が鳴り、そこで終わってしまいます。一方、チャンピオン大会は少なくともワンコーラスを歌ってもらいます」

 チャンピオン大会も生放送だ。午後7時30分に始まり午後8時50分に終わる。放送時間の尺に合わせるため、歌われる13曲は進行に従って演奏時間を厳密に調整する。この作業が「曲のサイズを合わせる」と表現される。前奏や間奏をアレンジするなど、様々な手直しが行われるという。

「選ばれた13組の皆さんが『のど自慢』で歌った時のVTRを、編曲やアレンジを担当する専門家にも見てもらいます。番組の進行と照らし合わせながら、曲のサイズ、アレンジ、キーの調整などを決め、デモ音源が作られます。コンピューターで作った音ですが、これがなかなかのクオリティです。1月下旬から順次、音源をメールやCDで13組の出場者に送りました。出場者の皆さんにはこのデモ音源で練習してもらうわけです」

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