1人の出演者から意外な要望が…NHK「のど自慢チャンピオン大会」、生バンド復活の舞台裏
NHKは2月24日、総合テレビやラジオ第1放送などで「NHKのど自慢チャンピオン大会2024」を放送した。毎週日曜の午後0時15分ら放送が始まる「NHKのど自慢」では、昨年45組のチャンピオンが誕生。その中から厳選された13組が歌声を披露し、“プロより上手い”と絶賛された。(前後編の前編)
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放送が始まると、さっそくXには視聴者からの感想がひっきりなしに投稿された。その中には出場者の歌唱力について触れたものだけでなく、《生バンドに加えオーケストラの伴奏で悶絶している》、《生放送で生演奏。凄い豪華》と音源に注目したものも多数を占めた。担当記者が言う。
「2023年4月2日に放送された『のど自慢』から、初めて予選も本選も伴奏がカラオケ音源となりました。視聴者からは生バンドの廃止を惜しむ声や、カラオケの使用を批判する意見が巻き起こりました。スポーツ紙の芸能欄だけでなく全国紙の社会面にも記事が掲載されるなど、まさに国民的関心事、国民的議論となったのです。ところが、チャンピオン大会は生バンドだけでなくオーケストラも加わるという豪華な布陣でした。Xの投稿を見ると、これを大歓迎した視聴者が多かったことが分かります」
デイリー新潮もカラオケ問題についてNHKに取材を申し込み、当時のチーフプロデューサーのインタビュー記事を配信した(註1、2)。コンピューターで制作された、生バンドでは再現が難しい楽曲の出現や、生放送に対応できる凄腕のミュージシャンが全国各地で減少していることなど、カラオケ化は“時代の必然”だったことが浮き彫りになった。
生伴奏の根拠
だが、チャンピオン大会では生伴奏で放送された。その舞台裏はどのようなものだったのか、番組プロデューサーのNHK第3制作センター、友杉徳孝氏に取材を依頼した。
「2023年7月、前任者が新聞の取材に、『チャンピオン大会は生バンドとオーケストラによる伴奏を行います』と発表しました。ちょうどその頃、私は名古屋放送局から東京に異動し、チャンピオン大会にプロデューサーとして参加することが決まりました。私も長年、『のど自慢』にディレクターとして関わってきましたので、カラオケ伴奏のメリットは熟知しているつもりです。とはいえ、チャンピオン大会には生伴奏が相応しいと、私も考えていました」
ラジオで「のど自慢」の放送が始まったのは1946年1月。その数年後にはチャンピオン大会も始まったと言われている。実は80年近い伝統を持つ栄えある大会なのだ。
毎週放送される「のど自慢」の審査では、歌唱力が最優先されるわけではない。出場者の人間的魅力やエピソードなども重要な意味を持つ。
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