金田正一、仰木彬、落合博満…名監督が暴言で退場! 審判にいったい何を言ったのか?

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「お前が退場や!」

 暴言による退場で自ら作った史上最年長退場記録を更新したのが、オリックス・仰木彬監督である。

 2005年7月16日のロッテ戦、1点を追うオリックスは7回1死二、三塁、6番・サイモンの遊ゴロで三塁走者・谷佳知が同点のホームを狙う。

 小坂誠から送球を受けた捕手・里崎智也が振り向きざまにタッチを試みたが、追いタッチのように見え、谷も「自信を持ってセーフと言える」と確信していた。

 ところが、山崎夏生球審の判定は「アウト」。位置取りが悪く、ミットと走者の隙間が見えなかったようだ。谷は当然納得できず、同球審の両肩を押すようにして激しく詰め寄る。仰木監督もベンチを飛び出し、「ノータッチ!」と口角泡を飛ばして抗議した。

 口論はエスカレートし、仰木監督は興奮のあまり、活字にできないような暴言を口にした。

 これを受けて山崎球審が退場を宣告すると、仰木監督は「お前が退場や!」と怒鳴りつけたあと、ダッグアウト裏に姿を消した。

 同年6月4日の広島戦でも投手交代を「言った」「言わない」で土山剛弘球審と口論になり、遅延行為で通算6度目の退場処分を受けた仰木監督は、このとき樹立した史上最年長の退場記録をさらに70歳2ヵ月に更新した。

 その後、試合は指揮官の体を張った退場劇に闘志を呼び覚まされたオリックスが2対1と逆転勝ちしたが、快勝後も仰木監督は怒りが収まらず、「同点で一死二、三塁になるはずが、たまらんよ。セーフは間違いない。まあ、山崎(球審)はストライク、ボールの判定はいい出来やった。ジャッジひとつでどうとは言わんけど、罰金が来ても払わんぞ! 罰金が来るようなら、連盟の会長も事務局長も退場や!」と息巻いていた。

12年後に明かされた「暴言」の中身

 選手時代に2度、監督時代に6度と、前出の金田監督とともに歴代3位タイの通算8度の退場を記録した中日・落合博満監督が、唯一暴言を理由に退場宣告を受けたのが、2010年9月18日のヤクルト戦である。

 問題の場面は、1対1で迎えた5回裏のヤクルト攻撃中だった。

 2死二、三塁で畠山和洋が右翼線に放った打球に、藤井淳志がダイビングキャッチを試みたが、ボールはグラブに当たってから、グラウンドにポロリと転がった。

 藤井が打球に触れたのはファウルゾーンに見えたが、石山智也一塁塁審はフェアと判定。ボールがファウルゾーンを転々とする間に2者が生還し、3対1となった。

 直後、当事者の藤井と捕手の小田幸平が「ファウルではないか?」と抗議し、落合監督もベンチを飛び出してきた。

 激しく抗議を続ける落合監督は、間もなく暴言を吐いたとして退場を宣告された。

 石山塁審は「フェアかファウルかについての抗議です。監督から“お前の見解を聞かせてくれ”と言われた。“ライン上で触った”と伝えたところ、暴言があったので、“退場になりますよ”と伝えた」と説明したが、暴言の内容については、有隅昭二球審が「監督の名誉もあるので」と明かさずじまいだった。

 それから12年後の2022年11月。落合氏が自らの公式ユーチューブ上で、「ライト線のフライをファウルゾーンでグラブに当てたやつをフェアって言われて、それを落としたんだよな。“何だ、このヘタクソ!”って(一塁塁審に)言ったら、一発退場だったよ」と明かしたことにより、「このヘタクソ!」だったことが判明した。

 今回紹介した暴言退場劇は、現在なら、リクエスト対象外のケースの金田監督を除けば、おそらく起き得なかっただろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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