「批判に晒されてもSNSはやめられない」…現役漫画家が明かす「セクシー田中さん」問題に通じる“切実な事情”とは

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実は多い、漫画家とアシスタントのトラブル

 漫画『セクシー田中さん』の作者・芦原妃名子氏の自死が騒動になり、XなどのSNS上では漫画家と、出版社やテレビ局といった大企業の間で起こる様々な問題に注目が集まっている。近年、著名な漫画家が編集者や出版社と契約上の理由でトラブルになり、ネットで告発するケースが相次ぐ。こうした事例はニュースにもなりやすく、ファンも漫画家を応援するコメントを書き込むことが多い。

 その一方で、水面下で多く起こっているのが、漫画家同士で一悶着あるケースだ。数年前、ある漫画家がネット上にライバルの漫画家を誹謗中傷するコメントを匿名で書き込んだところ、程なくバレてしまい、出版社を巻き込んで示談をしたという話を聞いたことがある。現役の漫画家A氏はこう分析する。

「私が聞く限りでは、漫画家VS漫画家のトラブルの方が実は大変多いし、表に出にくいので厄介なんですよ。編集者とのトラブルも確かに多いですが、編集者は会社に属しているので、最悪の場合はより上層部や外部に苦境を訴えることができる。ところが、漫画家同士のトラブルの場合はネット住民から“わがまま”や“個人攻撃”ととらえられがちだし、周囲に相談もしにくい。だから、表に出ることがないのだと思います」

 以前、ある新人漫画家が先輩漫画家から受けたパワハラをネットに書き込んだところ、ネット住民から「あの新人はやばい奴だ」「先輩の言うことの方がもっともだろ」「そういうことは売れてから言え」とバッシングされた事例がある。ネット住民はどうも、大企業を叩きたがる一方で、個人にはかなり冷たい傾向がある。A氏は、「編集部から干されることより、一般の人から叩かれるのが怖い」と話し、相互監視社会のやりにくさを感じるという。

アシスタント先でパワハラを受けた

 また、漫画家とアシスタントがトラブルになるケースも以前からあった。アシスタントは漫画家の卵や新人が務めるケースが多く、明確な上下関係があるためパワハラに巻き込まれやすいのだ。ある漫画家はアシスタントに日常的に暴力を振るうため、ほとんどアシスタントが定着せず、しまいには編集者にも精神的な攻撃を加えているという話があった。漫画家B氏が聞いた深刻な事例は、漫画家からアシスタントへの未払い問題である。

「約20万円のアシスタント代が支払われず、少額訴訟を起こしたという話もあります。いつまでも払って貰えず、相手がバックレようとしたそうです。アシスタントをしている人は連載などで稼ぐチャンスがまだない新人が中心ですから、死活問題です」

 こうした問題は、コロナ騒動が蔓延して以降、かなり聞くようになったとB氏は語る。かつて、アシスタントは漫画家のもとに通い、仕事をするのが一般的だった。ところが、近年は、テレワークでアシスタントに指示を出す漫画家が多数派になっている。この傾向は2020年のコロナ騒動以降に加速しており、「なかには、お互いの顔も知らないままやり取りしているケースも少なくないせいか、支払いがなあなあになってしまうこともあるようです」と、B氏は分析する。

「出版社と揉めるのは、連載のチャンスを得ている漫画家が多い。もっと立場の弱い人は出版社とだけでなく、漫画家同士で揉めることも多い印象です。あるベテラン漫画家の中には今でも昭和の時代の慣習を引きずっている人もいるようで、時代錯誤になったルールをアシスタントに押し付けることもあるようです」

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