いつまでもあると思うな、親とタモリ… 「ブラタモリ」突然の終了から感じたこと

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タモリの終わり、森田一義の始まり

 今後、タモリさんはどうなるのだろう。

 毎日何をして過ごすのか。

 かつて「休みの日は何をしてますか」とSMAPに訊かれて、

「休みの日は、起きたら歯を磨く前にビールを飲む」と答えた。

「いいとも!」終了後はおそらく毎朝ビールを飲む習慣にも飽きて、別のルーティンを見出しているかもしれない。しかし私生活は謎に包まれたままだ。

 番組が終了しても、タモリさんはサングラスを外してひっそりとあちこちを散歩するだろう。

 見かけても気づかないふりをして、声をかけないほうがいい。彼はもう「タモリ」ではない。福岡から上京し、「タモリ」を演じてきた多才なインテリ、森田一義に戻ろうと準備している。

 寂しい気持ちはみんな同じだ。しかし、タモリさんを見て育った世代にはこう言いたい。

 いつまでもあると思うな、親とタモリ。

 赤塚不二夫の葬儀の際、タモリさんは「私もあなたの作品の一部です」と締め括った。

 赤塚不二夫の最高傑作は、そう遠くない将来、バカボンのパパやニャロメと同じポジションに並ぶ。永遠に生き続ける。

教わった「あるべき下山」

 タモリさんだけではない。彼より歳上の関口宏さんも37年間続いた「サンデーモーニング」のMCをこの春降りる。

 タモリと双璧のビートたけしも、長年の親友である黒柳徹子も、テレビで見る限り、すっかり老け込んだ。盟友井上陽水も近年は見かけない。

 年老いた親を看取ることは不幸ではない。

 我々は団塊の世代を見送る義務がある。

 見送った後は自分たちの番だ。

 驚き、戯れ、諦念、崇高……タモリさんは多くのことを教えてくれた。最後は「あるべき下山」だ。

樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
作家。出版社勤務を経て、09年『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。著書に『タモリ論』『雑司ヶ谷R.I.P. 』『民宿雪国』『テロルのすべて』『二十五の瞳』『ルック・バック・イン・アンガー』『さよなら小沢健二』『アクシデント・レポート』『中野正彦の昭和九十二年』などがある。

デイリー新潮編集部

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