他局にも波及する「不適切にもほどがある!」効果 岐阜県町長の「頭ポンポン」も

国内 社会

  • ブックマーク

TBSの夕方ニュース「Nスタ」も「不適切」について特集

 ドラマを放送するTBSでも、3月1日に「Nスタ」で「ドラマ『ふてほど』旋風」という特集を放送していた。ここでも街頭インタビューがよく使われていた。

「ドラマで驚いた昭和のシーンは?」という質問に対して一番多かったのが“煙草”だった。

「私はバスの中で煙草を吸っているところとか、教室、学校で先生方が煙草を吸っているところが衝撃でした」(20代女性)

「当たり前にどこでも煙草が吸えたっていうのにびっくりしました」(20代女性)

 ニュース番組らしく解説データも入る。主人公の市郎が元々いた1986年の喫煙率は男性62.5%、女性12.6%と煙草が普及していた時代だった。

 次に挙げたのが“セクハラ”と“ルッキズム”だった。

「セクハラだよね。かわいいからって『大学行かなくていい』って(教師が発言する場面)。何の保証もないじゃないですか」(50代女性)

「ショックですよね。内面見ずに容姿だけで決められちゃうと」(10代女性)

 1989年の流行語大賞の金賞(現在の大賞)に「セクシュアル・ハラスメント」が入り、2022年に「ルッキズム」がノミネートされたという解説も入る。

 ドラマで昭和と対照的に描かれる、令和のコンプライアンスについて人々はどう感じているのか? を聞いてみると…

「ハラスメントに対しては会社もすごく気遣っています。私らもたとえば電話するとしても、いったんTeamsのチャットで『電話していいですか』『今大丈夫ですか』と断ってから電話する」(60代男性)

「今は何でもすぐ注意するとパワハラ…。昔なんて先生、竹刀持ってましたもん。(Qコンプライアンスを気にしすぎて発言できない?)全然あります。あります」(60代女性)

「やっぱり叱るっていっても全部が悪いことだと私は思わないので、相手にちゃんと良い方向に変わってほしくて言葉を伝えるっていうのは人にしかできないことだし、やっぱり私の悪いところはちゃんと言葉にしてはっきり伝えてほしい」(20代女性)

 ドラマの中でも「ちゃんと叱ってほしい」と先輩に熱望する令和の若手女性社員が歌で思いを伝える場面があったが、先輩に厳しく指導してほしいと考える若い世代も少なからず存在する。

大河をさしおいて「不適切」に触れたNHK

 最後に、ドラマの影響がNHKでも見られた例を。3月8日、NHK朝の情報番組「あさイチ」はプレミアムトークのゲストに俳優の吉田羊を迎えた。MCの博多大吉が「早速こちらのVTR! いま話題の『不適切なアレ』を見ましょう!」とドラマを紹介。吉田はNHKの大河ドラマ「光る君へ」にも出演中だが、それを差し置いて「宮藤官九郎さん脚本のタイムスリップコメディー。羊さんはフェミニストの社会学者をコミカルに演じていて話題です」と「不適切…」が紹介されたわけだ。

 視聴者から届いたメッセージのイラストには、吉田が演じる向坂サカエが、タイムスリップでやってきた昭和で、スマホの電波をひろおうと背伸びする姿が描かれていた。MCの鈴木奈穂子アナウンサーも、正確な番組名は語らず「不適切なドラマもすごく話題で…」と話題を振っていた。

「あなたは何を不適切と感じるか?」。この話題は世代を超えたコミュニケーション・ツールでもある。ドラマは見ている者にそのことを考えさせながら次第にクライマックスに向かっている。次はどんな「不適切」を私たちに突きつけてくるのだろうか。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。