マサイ戦士の第2夫人になった日本人女性の告白 伝統を守るマサイ族は今スマホで何を見ているのか
マサイの伝統や動向をYouTubeなどでチェック
――携帯電話やスマートフォンが生活の中に入ったことで、牧草の位置などについて情報交換ができるようになったと聞きました。
ジャクソン「他にもいろいろな情報が入るようになりました。私はYouTubeやTikTokで政治関係のチャンネルをよく見ています。2022年に誕生したマサイ初の女性大臣をはじめ、マサイの政治家たちがどれほど支持を集めているのか、政治の方向性などがスマホのお陰でよく分かるようになりました。マサイは隣国のタンザニアにも多く住んでいるので、いろいろな地域のマサイが運営しているチャンネルやローカルニュースもよく見ています」
永松「マサイの伝統に関するチャンネルも好きなようです。ケニアの民族には文字がなかったため記録する文化がなく、どの民族も書物としての資料がほとんど残っていない。あっても学校教育を受けていない世代は文字が読めない。そこで音声や映像で解説するマサイ語チャンネルは画期的だったと思います。現在はかなりのチャンネル数があり、彼らにとっては娯楽というより、今後を知るための便利なツールです」
年を取ることは最大の誇り
――戦士時代から大人時代を経たマサイの男性たちは、人生最終ステージにあたる長老時代に入ります。ジャクソンさんは2022年にこの長老昇格儀式を終えたそうですね。
ジャクソン「2世代上の長老たちが戦士時代からの私たちを育ててくれたように、今度は私たちが2世代下の子どもたちを育てる番です。戦士時代に入った子どもたちが長老昇格儀式を迎えるまでは35年くらい。彼らが長老になった晴れ姿を見届けてからこの世を去るのが、私にとって一番幸せなことだと思っています。
子どもの頃から年長者を敬うことを教えていくと、大人になってもその文化は失われることがないと我々は思っています。日本人とマサイの共通点として思い浮かぶのは礼儀正しさです。マサイも目上の人には頭を下げます。すると、目上の人がその頭をちょんと押さえる。これが尊敬の気持ちを込めた挨拶です」
永松「マサイの人たちにとって年を取ることは最大の誇り。尊敬される長老になることが人生最大の成功例で、生まれてきた意味はそこにあるくらいの重みがあります。私はずっと年を取りたくないと思っていましたが、長老昇格儀式を見て初めて、年を取ることは美しいことなんだなと思いました」
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