「もはや日本は安くて従順な労働者をつくるだけの国」 GDP世界4位転落で日本人が考えるべきこと(中川淳一郎)
人口約1億2500万人の日本のGDPが人口約8300万人のドイツに抜かれ、世界4位となりました。2023年のドル建てでの集計ですが、これをめぐりネットではまぁ~「正当化合戦」が展開されており、実に惨めな気持ちになりました。各種コメントはこんな論調です。
「前提として、GDP指標は無意味」「円安でユーロ高だからドイツが上がっただけの話」「国外の日系企業の数値を入れていないからフェアではない」「ドイツの方が物価が高いから当たり前の話」
いや、皆様、日本がGDP世界2位の時、こんなこと言ってましたか? 「日本すごい!」だったでしょ? 中国に抜かれた時は「人口がケタ違い」と言い、今回ドイツに抜かれたら物価と為替のせいだと言う。さらにはこんなコメントもYahoo!ニュースに書き込まれました。
〈ドル高の日本、ドル安のドイツ、ここを見ずしてGDP語る記事マジで止(や)めてほしい。よく知らない人は「ああ日本はまた沈んだ」みたいな気落ちさせるだけ。日本語の記事なんだからしっかり事実を記載しましょうよ。気落ちさせてどうするんですか。〉
事実を伝えただけの記事なのに、日本にとってネガティブな話題に対しては耳を覆って「あーあー聞こえない」とやりたいお方のようです。さらには「順位がすべてではない。日本は治安がいいし、メシはウマいし、インフラは整っている。日本語だけで仕事ができるから外を見る必要はない」なんて開き直る意見まで出る始末。
いや、そうじゃないの。私は今、タイに長期滞在中ですが、日本人観光客がすっかり存在感を失っていることを憂えているのです。海外の観光地で同胞が多数いることは国力の強さを意味するもの。しかし、バンコクでは圧倒的多数の白人(さまざまな国出身)がいながら、中国・韓国の人もかなり多い。
現実を認めなくてはいけないんですよ。もはや日本は安くて勤勉で従順な労働者をつくるだけの国になっています。それは、世界一の半導体メーカーTSMC(台湾)が熊本県菊陽町に工場を建設することにも表れています。
1980~90年代、日本のメーカーはアメリカに工場を多数作り、現地の雇用を支えました。それだけ日本経済が強かったわけです。私は中学・高校時代の87年から92年まで自動車メーカー勤務の父親の仕事の都合でアメリカで暮らしましたが、アメリカ人からは複雑な気持ちを時々吐露されました。まとめるとこんな感じです。
「あなた方がこの田舎町に工場を造り、多数の雇用を生み出してくれたことには感謝するが、正直、GM・フォード・クライスラーの米ビッグ3が工場を作る方がうれしかったと思う。いや、悪意は本当にないから」
この感覚、今こそわれわれは抱くべきだし、今後形勢を逆転するためにはGDP4位転落の屈辱をバネに、海外企業の日本進出を喜ぶ姿勢を改めなくてはならない。
GDP4位転落に関する記事に対し「こんな報道するな、反日マスゴミ」なんてネットに書いている場合ではないのです。この事実を認めぬ限り、日本は衰退する一方です。