米大統領選の大きなカギ、「不動産問題」はトランプにとって追い風か、急所になるか

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米国経済が急速に悪化する可能性

 米国政府は5日、手頃な価格の住宅供給を後押しするための新たな措置を発表したが、「泥縄」の感は否めない。

 住宅用不動産市場が過熱しているのに対し、商業用不動産市場は冷え込んだままだ。米国の1月の商業用不動産の差し押さえ件数は前月比17%増の635件となった。前年と比べると約2倍の多さだ(2月23日付ブルームバーグ)。

 世界の金融システムを動揺させた米地銀シリコンバレーバンクの破綻から10日で1年が過ぎたが、商業用不動産ローンの不良債権化が今後膨らむとの懸念が生じている。商業用不動産ローンで中心的な役割を果たしている地銀が今後、相次いで破綻する事態になれば、米国経済が急速に悪化する可能性は排除できないだろう。

トランプ氏の追い風と泣き所

 住宅用と商業用、2つの不動産市場で問題が生じている現下の情勢は、132年前のクリーブランドに続いて2人目の「返り咲き大統領」を目指すトランプ氏にとって追い風だ。

 だが、「泣き所」もある。

 多額の訴訟費用を捻出する目的で自身が保有する商業用不動産を売却しようとしても、市場価格が急落しているため、十分な資金を確保できず、長期にわたる大統領選を戦うことが難しくなっている(3月1日付ブルームバーグ)。

 不動産の状況は米国人の生活を大きく左右する。「大統領選の勝敗を決する」と断言するつもりはないが、その動向が今後大きな影響力を持つことになるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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