米大統領選の大きなカギ、「不動産問題」はトランプにとって追い風か、急所になるか

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改善されない中間層の暮らし

 節約志向の背景には雇用情勢の悪化がある。

「米国企業の2月の人員削減数は8万4000人を超え、2009年以来最多となった」との調査結果がある(3月8日付Forbes JAPAN)。

 そのせいだろうか、「米国の労働者の85%が『今年中に職を失うのではないか』と懸念している」とするアンケート結果も出ている(2月25日付Forbes JAPAN)。

 家計も「火の車」になりつつある。

 米国政府によれば、1月時点で、クレジットカードや学生ローンなどの負債に対し、住宅ローンとほぼ同規模の利息(年率換算で5734億ドル(約86兆円))を支払っている。この水準はインフレ調整後でも過去最高であり、昨年第4四半期時点の住宅ローン金利の年率換算5783億ドルに迫るものだ(3月6日付ブルームバーグ)。

 バイデン氏は「中間層の暮らしを改善するための政治を行った」と強調しているが、多くの国民はその恩恵に浴していないのだ。

深刻な住宅不足から価格が急騰

 さらに、米国人にとって夢であるマイホームが「高嶺の花」になってしまったという「不都合な真実」も明らかになりつつある。

 不動産情報サイト「ジロー」が2月28日に発表した調査結果によれば、現在住宅を購入するために必要な年収は10.6万ドル(約1600万円)超となり、2020年に比べて4万7000ドルも増加した(伸び率は約80%)。

 ローン金利とともに住宅価格そのものが高騰していることが災いしている。2020年時点では米国の半数以上の世帯が住宅を所有する経済的な余裕を持っていたが、現在の住宅価格に必要な年収の水準は中央値(約8万1000ドル)を上回っており、大半の世帯にとって住宅は手の届かないものになってしまった(3月1日付ブルームバーグ)。

 バイデン政権は「高圧経済政策(経済を政策的に需要超過の状態に誘導して景気回復を図るやり方)」を推進してきたが、需要の急拡大に見合った住宅の生産増が出来なかったため、深刻な住宅不足に陥り、価格の急騰が起きてしまったというわけだ。

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