ガムテープで受話器と手をグルグル巻きに…ビッグモーター元幹部の「中卒トップセールスマン」が実践した「絶対にあきらめない営業」

国内 社会

  • ブックマーク

ベテランと新人を「完全分離」

 ボトルネックがまさかベテラン社員だったとは驚いたが、これは多くの組織でありがちな事だ。こういった事はこれから何度も起きる。「ボトルネック」と思って取り除いていくと問題の本質が別に見えてくる。そういうものだ。

 こうやって次々と「ボトルネック」は現れる。なくなる事は絶対にない。そういうものだと分かっていなければやっても無駄だと錯覚し、マネジメントが機能しなくなる。これから他の問題にも対処していくが、見事に次々と別の問題が発生する。

 僕は「新人チーム」の話を聞きルールを設ける必要があると思った。再度メンバーと話し合ってルールを決めた。

・雑用の押し付け禁止
・ベテランチームだけで新規商談の対応をする
・新人チームは「売ってコール」からしか商談をしない

「新人チーム」がそれぞれ電話から売るまで、新規の商談に行けないという厳しいルールにした。ベテランチーム4人の退路を断ち、新人チームが電話に集中できる環境を作る為に必要だった。

 こうなってしまっては、「ベテランチーム」は売るしかない。そこまでして自分たちに優先的に行かせてもらって売れなければ恥ずかし過ぎる。それに敗戦処理部隊もいないから商談を途中で投げ出す事もできないだろう。

ベテランを騙すために打った“秘策”

 僕は改めて「新人チーム」を集めて話し合った。

「これで俺たちは新規の商談に行けなくなった。このまま電話で商談が作れなければ今月は0台。下手したらクビだ。1台も売れなかった俺も更迭だろうな。どうする? 俺はやると決めたけど、お前たちはやれそうか?」

 全員即答で絶対にやり切ると答えた。彼らはこれまで、先輩たちの雑用や、敗戦処理にいら立っていた。自分たちのペースで商談する事の方が100倍マシだと言ってくれた。 思い切った判断だった。もちろん怖かったけれど、それぐらいのリスクを取らないと何も変わらないと思った。

 だが、何年間もやってきた習慣はなかなか直らなかった。「ベテランチーム」が店長の目を盗んで新人に雑用を押し付け始めた。そして「新人チーム」のアプローチ活動を邪魔する。新人は怖くて断れない。

 それを交代で繰り返す。僕がいくら注意しても「納車が遅れてクレームになるよりマ シだろ」と言い訳して悪びれる様子もない。完全に店長として舐められている。悔しくって怒鳴りつけてやりたい気持ちだったが、怒っても逆効果だろう。僕に力がないから仕方がない。

 それで、僕は彼らと話し合って一芝居打つ事にした。「ガムテープで受話器に手をぐるぐる巻き」だ。昔はゴリゴリの営業会社でよくやっていたと聞いた。笑われそうだが、それを本当にやってしまった。

 当時の僕はそれ以外に思いつかなかった。もちろん新人チームと打ち合わせをした上で、ベテランチームから身を守る為だ。今思えば、どう考えてもパワハラだし、周囲に恐怖心を与えたに違いない。当時のメンバーには申し訳ないが、正直この時はドッキリを仕掛けるみたいで楽しかった。

「あいつらドン引きするだろうなー(笑)」と裏で話し合ってゲラゲラ笑っていた。事情を知らないベテランチームは完全に引いていた。そこまでやらせて電話をさせて「あんた鬼かよ!」と僕に意見をしてきた。新人たちが可哀そう、雑用を押し付けるのは忍びないと思ったらしい。

次ページ:繰り返し目標を唱えてやる気にさせる

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。