ガムテープで受話器と手をグルグル巻きに…ビッグモーター元幹部の「中卒トップセールスマン」が実践した「絶対にあきらめない営業」

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トークで食い込むうちに見つかった“突破口”

 僕が代わって商談を開始すると、確かに難易度は高かった。クルマを何台も所有していて、毎年何かを買っている。相場を知り尽くしていて既に最安値を他社で見つけて、見積もりを取っていた。その金額は、自分たちの商品より20万円安かった。内容もこだわりが強い。オデッセイの黒、アブソルートのエアロ付きじゃないとダメだと言っていた。

 結論から言うと、僕はこのお客様に紫のノーマルのオデッセイの福祉車両を販売した。嘘だと思うだろうが、最後まで話そう。話し込んでしっかりヒアリングしているうちにチャンスを見つけた。

 足の悪いお母さまを週に一度、病院に送り迎えしているという話が出た。「ここしかない」と思った。他社と同じ商品で値段勝負しても勝てないけれど、福祉車両なら新車との価格差も大きく、中古で買うメリットが大きい。福祉車両は市場の流通台数も少ないから他社との競合は避けられると考えた。

 そして何よりも、足の悪いお母さまが車高の低いオデッセイのアブソルートに乗り降りするのは大変なんじゃないかと素直に思った。

「お母さま、福祉車両だったら乗り降りが楽でしょうね」

 お客様は既にクルマを5台所有していた。「確かになぁ。昔は迷惑いろいろかけたし、1台母ちゃん用にするか」と言ってもらえた。実はクルマの乗り降りが一人ではそろそろ厳しくなっているそうだ。その日のうちに家まで訪問して、お母さまにも乗ってもらって、全員ご納得の上で、福祉車両という選択をしていただいた。このお客様はこの後、このオデッセイが廃車になるまでお母さまの病院の送迎に使う事になる。お母さまにもとても喜んでもらって、それ以降はずっと買ってくれるようになったユーザーだ。

 少し話が逸れたが、これが初日の出来事だ。平日に2台売れる事なんてこの店では珍しい。かなり良い滑り出しだった。たが、問題は、僕がいなければ間違いなく2台失っていた事だ。何故昨日あれだけ話し合ったのに、1件目の商談に新人を行かせたのか? 2件目の商談を何故あんなに簡単に諦めたのか? 全員を集めてこの事実に向き合った。

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