なぜ「唐揚げ専門店」は消えたのか? 倒産急増のウラに「3つの要因」、“手軽に参入できる”こともアダに…
“参入障壁の低さ”が災い
――たしかに、唐揚げは“安くて美味しいB級グルメ”のイメージが強いので、スーパーやコンビニのお惣菜と比較すると割高感は否めませんね。
「そうなんです。もともと価格設定が高めなこともあり、3年前に比べて輸入鶏肉の価格が2倍、食用油が1.5倍に高騰しても客離れを懸念して大幅な値上げができず、収益源との板挟みになって経営破綻するケースは少なくありません。それに加えてもうひとつ、大きな要因を挙げるとすれば、参入障壁の低さでしょうね」
――あれ? 参入障壁が低いおかげで唐揚げ店が一気に増えたわけですよね。
「ええ、それが諸刃の剣だったということです。先ほども申し上げた通り、唐揚げ専門店はコロナ禍の“中食需要”の高まりに乗じて店舗数を増やしました。その時期、多くの飲食店は時短営業や休業に追い込まれていた。そこで何が起きたかというと、大手コンビニやスーパーが唐揚げの扱いを増やしたのに加え、居酒屋や焼き鳥屋、定食屋まで唐揚げのテイクアウトを始めるようになった。店内に厨房があって鶏肉を仕入れているお店であれば、専門店と同じように“揚げたて”を提供できてしまう。つまり、唐揚げ店は参入障壁の低さのおかげで激増したものの、同じ理由でライバルが次々に参入して競争が激化。飽和状態になってしまったのです」
――今後、唐揚げ専門店はどうなっていくのでしょうか。
「やはり一時のブームは去ったと思います。当然ながら、時流を読んで下火になる前に閉じた店もあれば、やめるタイミングを逸して損害を被った店もあるでしょう。その上で、ブームが終わった後も残っている店には支持される理由や、他にない価値があると思うんです。たとえば、唐揚げ店の前に流行ったタピオカドリンクの専門店。その多くは姿を消しましたが、ブームを牽引した台湾創業のゴンチャは、いまだに日本全国で展開しています。当然ながら、そこには価格や味、サービスなど、他店とは違う儲かる強みが存在するのです」