鳩山由紀夫氏は政倫審を拒否していた…「民主党政権の悪夢」こそが岸田首相の守護神である
鳩山首相の虚偽記載は3億5000万円、贈与は9億円
僕はといえば、09年当時は国税担当記者だった。政権交代直前、この年の7月、民主党代表だった鳩山氏には実母からの贈与を第三者の個人献金であると仮装した疑惑が持ち上がっていた。
鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」が「個人献金」と届け出たなかに、すでに死亡した人の名義が含まれていたことが発覚し、パーティー券収入でも同様の虚偽記載が見つかり、08年までの5年間で虚偽記載は約3億5000万円にものぼった。
鳩山氏は母親から月1500万円もの贈与を受け、総額は5年間で9億円にも上ったというのに「知らなかった」と国会で答弁した。「贈与であれば、これは脱税になるな」と日々、緊張したことを思い出すが、東京地検特捜部は鳩山首相本人を聴取することもなく、当時の公設第一秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕、政策秘書を同罪で略式起訴したものの、鳩山首相本人は罪に問われなかった。
検察審査会は「不起訴相当」としたものの、母親からの資金提供を知らなかったとは「素朴な国民感情として考え難い」と付言した。そのうえで「政治資金規正法は政治家に都合の良い規定になっている」などと異例の言及をし、改正を促している。
東京国税局はこの問題に関し、鳩山氏を税務調査したが、「悪質な仮装隠ぺいはなかった」として、調査を打ち切った。
故意の無申告による脱税は5年以下の懲役または500万円以下の罰金という(所得税法238条3項)決して軽くはない罰則がある。
月1500万円の贈与を「知らなかった」と言い切る鳩山首相の金満ぶりにも呆れるほかないが、脱税に問わなかった東京国税局の処分は今も納得できない。
鳩山氏は罪に問われることこそなかったが、発足時は72・0%もあった支持率(共同通信調べ)は、瞬く間に急降下し、内閣発足後3カ月後の12月には50%を割り込んだ。結局、10年5月末時点で19・1%にまで落ち込み、10年6月4日、総辞職した。
政倫審を拒否した鳩山首相
今、野党は政治倫理審査会を開くように要求し、自民党では安倍派(清和政策研究会)の事務総長経験者4人を出席させた。野党は「誰が裏金を再開させたのか。西村康稔前経産相と塩谷立元文部科学相の発言の食い違いを首相は指揮を執って、解明すべきだ」(辻元清美立憲民主党代表代行)というが、疑惑が明るみになった際、鳩山氏が政倫審の出席すら拒否したことを忘れているのだろうか。
民主党はまんまとこの疑惑に蓋をして、政権の奪取に成功したことを野党、特に民主党を母体として誕生した立憲民主党は自ら顧みたことが一度でもあるだろうか。
しかも追及の急先鋒に立っている辻元代表代行にしても、02年、社会民主党在籍時、公設秘書の給与1870万円をだまし取ったとして、東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年、執行猶予5年の判決が確定している。むろん罪を償った以上は問題ないというのが建前にせよ、ほかに適任者はいなかったのだろうか。
国民の期待を受けて、自民党から政権を奪取し、国民の期待を一身に受けながら、相次ぐ「政治とカネ」問題で支持率を急降下させたのは、ほかならぬ民主党政権であり、その反省もなく、自民党に倫理を問うても当時を知る国民はしらけるばかりだ。
岸田政権が低空飛行を続けつつ、政権を維持し続けるのは、そんな野党の体たらくにも少なからぬ責任があるのだ。