鳩山由紀夫氏は政倫審を拒否していた…「民主党政権の悪夢」こそが岸田首相の守護神である

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 政権並びに自民党の支持率は低下しているものの、そのわりに野党の人気も上がらず、ただ無党派層や無関心層が増えているだけ――というのは、これまでにもよく見られた光景である。

 野党の人気が上がらない最大の理由は、いまだに国民の多くが民主党政権への失望を記憶しているからではないか、と指摘するのは元産経新聞記者でジャーナリストの三枝玄太郎氏。

「政治とカネ」の問題、あるいは「メディアへの圧力」「メディアの忖度」といった現在問題視されていることは、民主党政権時代にも見られたことである、また、そうした問題を解決してくれるはず、という期待を背負っての政権交代だっただけに失望感も大きかった、というのだ。以下、三枝氏の分析である。

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いまだに民主党への失望感が残っているのでは

 自民党が窮地に陥っている。東京地検特捜部が大がかりな家宅捜索を行い、政治資金規正法違反容疑で池田佳隆衆院議員を逮捕、1月19日、同容疑で大野泰正参院議員を在宅起訴、谷川弥一衆院議員も略式起訴され、1月30日、東京簡裁から罰金100万円と、公民権停止3年を言い渡された。

「令和のリクルート事件」と大騒ぎした割には、立件はこの3人だけ。証拠隠滅を図り、自爆に近い形で逮捕された池田衆院議員を除けば、罰金にしかならない「微罪」だ。と書くと、「庶民だったら100円の賽銭を盗んでも捕まるのに」と言う人がいるが、罪状がそもそも違うのだから仕方がない。政治資金規正法違反は、会計責任者を処罰するという建付けの法律なのだから、議員本人に累が及ばないであろうことは初めからわかっていた話だ。

 問題は、事件がひと段落した後の国会の、とりわけ岸田文雄首相の対応だ。いうまでもなく国会は立法府だ。議員に罪が及ばないのであれば、議員に責任を取らせるべく、連座制の対象にできるように法律を改正すれば良い。

 政治資金として使われなかったものが雑所得になるというのならば、いっそ政治資金を課税対象にすれば良いと思うのだが、国会審議は遅々として進まず、そういう話にはならない。

 それに外国人にパーティー券を購入させることを規制する動きが全く出てこないことも解せない。

「政治とカネ」の問題に取り組むにしても、本来国会ができることや、やるべきことについては議論せず、ただ「疑惑の議員」を攻撃することだけに注力するのは毎度のこととはいえ、実に不毛である。

 ただし、政権への影響は深刻だ。支持率はどの社のものも過去最低。個別面接方式をとり、信頼性が高いといわれる時事通信の世論調査では、2月15日発表の調査(9~12日実施)で16・9%まで支持率が下がった。09年9月の政権交代前夜、麻生太郎政権の支持率は同じ時事通信の調査で13・4%だった。「すわ、政権交代!」となっても不思議ではないのだが、そんな高揚感は今の国会にはない。

 麻生政権末期の野党第一党だった民主党の支持率は18・6%あった。今の野党第一党である立憲民主党の支持率はわずか4・1%だ。状況が全く違う。これは国民の不幸だ。緊張感など、望むべくもない。

 その理由の一つは民主党に裏切られたという根強い失望感だろう。

既得権の守護者だった民主党

 立憲民主党の前身、民主党は09年9月、鳩山由紀夫政権を発足させた。恥ずかしながら不肖この私も民主党に1票を投じた。

 日本が変わる。そんな高揚感が早々と裏切られることになった。

 鳩山政権の官房長官、平野博文は09年9月16日、鳩山氏の首相就任会見からフリーランスのジャーナリストやインターネットメディアの記者を締め出した。内閣記者会は平野氏に「新聞、テレビなどの既存メディアを敵に回すと、政権が長く持たない」と持ちかけ、平野氏はこれに呼応して「『記者クラブ開放は俺が潰す』とまで言った」と週刊朝日の山口一臣氏が自身のブログで明かしている。

 何のことはない。「既得権益」を打ち壊すために国民が一票を投じた民主党政権は、自民党政権以上に既得権益の守護者だったわけである。

 政権を追われた自民党の最後の首相、麻生太郎氏が「連日、高級ホテルのバーに通っていた」とか「ホッケの煮つけ」発言を肴に「ボンボン育ちの麻生太郎は、ホッケの食べ方も知らない」と連日、実体のよくわからぬ「庶民感覚」とやらを盾に麻生首相を攻撃していた既存メディアは、鳩山政権が発足すると「連日、モスバーガーに通っている」と持ち上げた。

 しかし、鳩山氏とてホテル・ニューオータニの「千羽鶴」などの高級店には行っていた。高級ホテルの日本料理店や「なだ万」などの高級料亭に通っていたのは、菅直人氏も同じだ。だが、こうした動向を麻生氏の時のようには既存メディアは叩かなかった。

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