センバツで大番狂わせ、「21世紀枠」が強豪校を撃破! 抽選会でなめたような相手の態度を見て、ナインが闘志 「高校野球の怖さを教えてやりますよ」
福留孝介擁するPL学園がまさかの
3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会。出場校は前年秋の地区大会の成績を参考に選ばれるとあって、ひと冬越して迎えた本番で、優勝候補のチームがまさかの初戦敗退を喫する大番狂わせも少なくない。【久保田龍雄/ライター】
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プロ注目のスラッガー・福留孝介(元中日、阪神など)を擁し、優勝候補筆頭だったPL学園が、初戦で涙をのんだのが、1995年である。
前年のセンバツでも6打点を挙げて4強入りに貢献した福留は、大会ナンバーワンの強打者として甲子園に戻ってきた。
1回戦の相手は、福留のライバル・沢井良輔(元ロッテ)が3番を打つ銚子商だったが、当時の「報知高校野球」(高校野球専門雑誌)の評価はランクBで、下馬評ではランクAのPLが有利だった。
だが、1回表、「(福留より)先に打ちたかった」という沢井が右越えに先制ソロを放ち、「沢井が打てるならオレたちも」とチームを乗せる。これに対して、PLも3回に福留のバックスクリーンへの特大3ランなどで4対1と逆転したが、中盤以降は激しい点の取り合いとなった。
大きな分岐点となったのは、PLが7対5とリードした7回だった。1死一、二塁でショートへの打球を福留がグラブで弾き、センターも本塁悪送球と、堅守を誇るPLがまさかのダブルエラー。直後、スクイズで同点に追いつかれた。この日のPLは5失策を記録。守備の乱れがいずれも失点につながる“らしくない”野球だった。
「平幕が横綱に挑む試合」
そして、7対7の延長11回、PLの2番手・前川克彦は先頭の「一番怖い」沢井を三振に打ち取り、「ホッとした」ことが裏目に出る。
1死から連続二塁打で1点を勝ち越された直後、「思い切り打つことだけを考えていた」という6番・山本啓樹に左越え2ランを浴び、あっという間に3点を失った。ここで福留が甲子園初マウンドに上がり、後続2者を三振と一ゴロに打ち取ったが、時すでに遅し。
その裏、先頭打者として打席に立った福留は二ゴロに倒れ、最後の反撃ならず……。7対10の敗戦後、「自分が主将を務めながら、1勝もできないなんて……」とうなだれた。中村順司監督も「優勝候補と言われて、選手がその気になって、気持ちが変わっていった」と知らず知らずのうちに芽生えていった慢心を戒めた。
一方、銚子商・飯島孝則監督は「平幕が横綱に挑む試合。思い切りしかありませんからね」と無欲の勝利を強調。勢いに乗ったチームは、2回戦以降も勝ち進み、準優勝を達成した。
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