【君が心をくれたから】雨が可哀想すぎて観ていられない…それでも耐え続ける視聴者の心境は
希望がわずかに見えつつも視聴者の試練も続く
さて、話を展開する前に、どんな物語なのか、あらためて説明しておいたほうがいいかもしれません。舞台は長崎で、逢原雨(永野)は高校時代に心を通わせた2年先輩の朝野太陽(山田)と再会しましたが、直後に太陽は交通事故に遭ってしまいます。すると、あの世からの案内人を名乗る日下(斉藤工)と千秋(松本若菜)が現れ、3カ月かけて五感を提供すれば、太陽の命は助かると提案します。
雨はそれを受け入れ、太陽は助かりました。その代わりに彼女は、味覚、嗅覚、触覚を順々に失いました。第4話まで、その過程に救いがほとんどなく、観るほどにつらくなったのです。それを裏づけるように、初回が7.2%だった視聴率は、第5話の5.3%まで一度も上がることなく下がり続けてしまいました。
でも、第6話以降の視聴率は6.2%、5.1%、5.5%、5.6%と、下がり続けることはなくなりました。まず、第5話で、それまでわざと太陽に嫌われようとしていた雨が、「五感がなくなっても私のことを好きでいて」と、太陽の気持ちを受け入れ、少し救われた気がしたものです。だから、6.2%まで持ち直したのではないでしょうか。
第6回では、雨の祖母の雪乃(余貴美子)が亡くなり、太陽は雨の家に頻繁に滞在するようになります。二人を応援している身にとっては、そこは「よかった」ものの、五感を失う病気などないことに太陽が気づきます。そして第7話で、自分がなぜ五感を失わざるをえないのか、雨は太陽に告げます。原因が太陽にあるのだから、告げるほうも告げられるほうもつらく、観ていられません。ただ、雨がひところのように、気づかうあまり太陽を避けたりしないだけ、マシなのでした。
第8話がまた、いたたまれなかったです。太陽は1カ月後に視覚を失う雨に見せるために、その直前の大会で花火を上げる決意をしますが(太陽は花火師です)、同時に、それっきり花火師をやめて雨の介護をすると決意。雨にプロポーズします。ところが、太陽の申し出を受け入れた雨は、太陽の未来を奪いたくないからと、1カ月後に彼の前から姿を消すと決めて、自分が出しておくと約束した婚姻届を破ってしまいます。そして、1カ月だけ夫婦を演じると決め、自宅でささやかな結婚式を挙げるのです。切なすぎます。
そして第9話。前話で太陽の死んだ母だとわかった案内人の千秋が、太陽や夫だった太陽の父、陽平(遠藤憲一)の思いに触れたり、日下の生前が明らかになって、そこにも少し救いが見えたりと、不幸だけが強調される展開ではなくなってきました。太陽が雨に、喪われた五感を戻してみせると語るところにも、一縷の望みをつなげないわけではありません。
しかし、そうはいっても、物語は一貫して雨の五感喪失に向かって進んでいて、それに関しては、少しも改善されないので、視聴者の試練は続いています。
[2/3ページ]