実父の葬儀で出逢った女性と不倫関係に…あっという間に夢中になって“ふと思った重大な事”、49歳夫が明かす「後悔と葛藤」

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「僕の中の父が死んだ」

 正月はどこにも行かないと聞いていたから、元日、散歩に行くふりをして彼女の家に行った。しつこく呼び鈴を押すと、彼女が顔を出した。

「息子が来てるの。帰ってと彼女は言ったけど、玄関を見たら男物の靴はなかった。いないだろと部屋に押し入り、別れたくないと懇願しました。でも彼女の顔を見たら、魂が抜けたようになっていた。そのときわかったんです。彼女にとって、僕の中の父が死んだのだ、と。もうそこにはいられなかった」

 彼女は遠慮から身を退いたわけではない。彼への興味を失ったのだ。通常の恋愛にもよくあるように、ふっと心変わりが訪れたのだろう。

「それ以来、彼女とは連絡をとっていません。妻とは修復できたのかどうか……。誤解を招いて申し訳なかったと言ったけど、あくまで僕は不倫を認めていません。平日は自宅、週末は母のところへ行くことが多かったんですが、先日、珍しく妻が『観たい映画があるの。今週末、行かない?』って。これが修復のきっかけになりそうです」

 とはいえ、失恋の痛手は癒えていない。日がたつにつれ、父と紗和子さんの関係が気になるようになってきた。父との20年、自分との10年。紗和子さんは今、何を考えているのだろうとも思う。考えても答えは出ないが、答えが出ないからこそ考えてしまうのが人間なのだと弘哉さんは知った。

前編【実父の棺にすがりついて泣く女性と実母が取っ組み合い、そして10年後に再び大騒動が…49歳男性が語る「2度の修羅場」】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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