実父の葬儀で出逢った女性と不倫関係に…あっという間に夢中になって“ふと思った重大な事”、49歳夫が明かす「後悔と葛藤」
クリスマスイブに事件が…
昨年12月のクリスマスイブの日、娘が初めて作ったケーキを味わい、しみじみ家庭の幸せを噛みしめながら寝室に行くと、妻が携帯におさめられた写真を見せてきた。
「それが例の居酒屋で、僕と紗和子さんが顔を寄せ合って飲んでいるところでした。反対側のカウンターから撮ったようです。『この人、誰?』と妻は言いました。誰と聞きながら、実は知っているような口ぶりだった。菜々美もあの日、父の不倫相手を見たはずですが、妻は人の顔を覚えるのが苦手だから、おそらく覚えてはいないだろうと瞬時に考えた。だから友だちだよと言いました。『私の友だちが、最近、このあたりに越したのよ。それであなたがたびたびこの人とこの店に来てるって教えてくれたの』と」
弘哉さんが黙っていると、妻はドレッサーに戻って鏡を見つめていたが、振り返っていきなりドライヤーを投げつけてきた。かわしそこなったために、ドライヤーが額を直撃した。妻は興奮して、手当たり次第にものを投げてきた。
「何が当たったのか、そのうち額が切れて血が出てきた。妻は流血を見てものを投げるのをやめ、寝室を出ていきました。落ち着いたのかと思っていたら、今度は包丁を手に戻ってきた。もうね……昔見た『シャイニング』という映画みたいでしたよ。怖かった」
少し冗談めかして言うしかないような話だから、彼は笑っていた。怖かったのは事実だろう。包丁を向けられて落ち着いていられるはずもない。
「とにかく話そう、落ち着こう。僕は浮気などしていないと言うしかなかった。『彼女の素性を調べたわ』と妻は私に切っ先を向けながら言いました。やっぱりバレていた。でも僕は『彼女とは偶然、知り合っただけだし、男女の関係ではない』と断言しました」
切っ先が下をむきかけたとき、妻に飛びかかるようにして包丁を奪った。オレを殺したら、子どもたちはどうなるんだと言うと、妻は涙をこぼした。
「浮気されるなんて許せない。私のプライドが許さない。妻はそう言いました。サレ妻になりたくなかったんでしょう。僕のことが好きだから悔しいという気持ちではないのかもしれない。屈辱だと妻は繰り返していましたね」
紗和子さんに伝えると…
あなたの顔を見たくないから、しばらく帰ってこないでと妻に言われたのは翌日のことだ。自宅から30分ほどのところで暮らす母のことを、もともと弘哉さんは気にかけていた。じゃあ、子どもたちの手前、母親の介護を言い訳にしようかと彼は言った。
「自由になれたと思わないでよと妻は言いました。家から放り出したら、僕が彼女のところに行ってしまうと思ったのかもしれません。でも自分は僕の顔を見ると腹が立つ。とにかく冷静になれる時間がほしいというのが妻の言い分でした」
彼はその日、実家に戻ってみた。母は元気で、介護を必要とはしていない。これからはときどき泊まりがけで来るよと彼は言った。だが母はそれを拒絶。「思春期の子どもがいるのに何を言ってるんだ」と怒られた。
「しかたなく1泊しただけで自宅に戻りました。母に追い出されたと言ったら、妻が『お義母さんから電話があった』と言うんです。母は『あのバカが何をしたかわからないし、許してあげてとは言わないけど、父親として認めるところが少しでもあるなら家においてやってほしい』と言ったそうです。高齢の母に心配をかけるのはよくなかったと妻が言うので、いや、悪いのは僕だからと」
妻は弘哉さんの不倫を確信している。探偵をつけたわけでもなく、証拠は居酒屋での写真だけなのに、それでも妻は長い期間つきあっているはずだと確信している。ただ、弘哉さんの父親の不倫相手だったとはさすがに気づいていないようで、それだけが救いだった。
「紗和子さんにも正直に伝えました。こういう状態だから、少しの間、会えないかもしれないと。すると紗和子さんは『潮時ね』って。いや、そうじゃない。僕はあなたとは何があっても別れないと断言しました。でも彼女は『今までがおかしかったのよ。こんな関係、続けていてはいけなかった』って」
彼は翌日、あわてて彼女の家に行ったが、彼女はいなかった。マンションなのでいつまでも付近をうろうろするわけにもいかない。数日後、彼女から電話が来た。もう、あそこには住まないから来ないでほしいということだった。
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