大谷は7割台を記録 なぜオープン戦とシーズンの打撃成績は違うのか プロ野球OBが語る体験と解説
オープン戦の特殊事情
広澤氏はオープン戦が好調だった年は、シーズンも大活躍できた。だが、「オープン戦は絶好調だったが、シーズンは不調だった」という選手は決して珍しくない。
例えばベースボールキングは2020年2月、「『シーズンにとっておけ』は本当?オープン戦で打ちまくった選手の“その後”…」との記事を配信している。
記事では9人の打者について、オープン戦とシーズンの成績を比較した。オープン戦の好調を維持できなかった選手の多さに驚かされるが、中でも極端だったのがヤクルトの塩見泰隆だ。2019年のオープン戦で打率は3割8分5厘と絶好調だったのだが、シーズンは1割2分6厘と低迷してしまった。
「オープン戦は配球を読みやすいという点は大きいかもしれません。ローテーション入りが確実視されているエースピッチャーでも、オープン戦は“テーマ”を掲げてマウンドに立ちます。例えば『今日はインコースを試してみよう』とか、『スライダーのキレを見てみたい』といった具合です。この場合、1回でも打席に立てば、簡単に投手の意図を見抜けます。次の打席で彼らの“テーマ”を狙い球にして待てば、比較的簡単に打つことができます」(同・広澤氏)
さらにオープン戦の場合、試合の半分くらいは若手がマウンドに立つ。生き残りに必死で、全力のピッチングで向かってくるとはいえ、“一軍未満”の投手も多い。レギュラー確定の打者が固め打ちすることも可能だ。当然ながら打率は上がる。
だがシーズンが始まると、雰囲気はガラリと変わる。エースピッチャーが“テーマ”を掲げることなど絶対にない。素晴らしいピッチングに翻弄され、配球を読むことも難しい。開幕戦の序盤で躓いてしまい、そのまま調子を落としてしまう──。
相反する本音
オープン戦に話を戻すと、相手チームを代表する打者が登場したとなると、ピッチャーの攻めは変わるという。普通なら開幕に向けて“テーマ”を追求しているエースでも、この時ばかりは実戦に近い投球で打者に挑む。
「いくらオープン戦でも、ヤクルトの村上くんや日ハムの松本くんに対戦するとなれば、ピッチャーも本気を出す必要があります。結果として、開幕後と同じように厳しく攻めることになるわけです。22年の首位打者に輝いた2人が、オープン戦の打率は決して良くなかったというのは、こうした点から説明が可能だと思います」(同・広澤氏)
結局、オープン戦の打撃成績は、あくまでも“参考程度”でしかないということなのだろう。
「選手としては相反する本音があって、オープン戦で打率やホームランの数は全く気にならないと言えば嘘です。とはいえ、シーズンほど深刻に受けとめないのも事実です。たとえアウトに終わったとしても、バッティングを振り返って、『しっかりとストレートを弾き返したな』とか、『変化球に対応できているぞ』という手応えを得られたなら、そこまで結果は気にしないというのはあります」(同・広澤氏)
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