大谷は7割台を記録 なぜオープン戦とシーズンの打撃成績は違うのか プロ野球OBが語る体験と解説
大谷の“ノルマ”
「23年、セリーグの首位打者は打率3割2分6厘を記録した、DeNAの宮崎敏郎選手でした。ところがオープン戦の打率は2割8分9厘で、絶好調というわけではなかったのです。パリーグの本塁打王も3人が並ぶという異例の結末でしたが、その中の1人であるロッテのグレゴリー・ポランコ選手は、シーズンの成績が打率2割4分2厘にホームラン26本でした。ところがオープン戦は46打席で7安打、打率1割5分6厘、ホームランはたったの1本という成績だったのです」(同・記者)
22年の首位打者も似た傾向だった。セリーグはヤクルトの村上宗隆で打率3割1分8厘だったが、オープン戦は2割4分4厘。パリーグは日ハムの松本剛で打率3割4分7厘に対し、オープン戦は2割5分だった。
バッターはオープン戦の成績をどう受けとめているのか、なぜシーズンの成績と食い違うことが少なくないのか、野球評論家の広澤克実氏に聞いた。
「チームの主軸を務める打者でも、オープン戦の序盤は“野球勘”が鈍っています。最初は打てなくて当然でしょう。私も現役の頃、序盤は『プロの投手って、こんなに球が速かったっけ!?』、『こんなに変化球って曲がったっけ!?』と驚いてばかりです。ところが10試合を一つの節目にして、目が球に慣れていきます。調子が戻ってきたと手応えを感じるのは50打席くらいからでしょう。今年の大谷選手は開幕の目安として『オープン戦50打席』を挙げていますが、私の経験から考えても、妥当な“ノルマ”だと思います」
開幕のプレッシャー
広澤氏は18年間のプロ野球人生で、オープン戦で打撃が絶好調だったことは、「たった1回しかない」と言う。これは1990年のことで、読売新聞が3月31日に「[オープン戦]広沢克と角、絶好調6号/ヤクルト2-1日本ハム」の記事を掲載したほどだ。
「この年だけはオープン戦の序盤から絶好調を実感していました。『自分は打てる』という自信がみなぎり、その勢いのまま開幕戦に突入しました。シーズンでも好成績を残せたので、『オープン戦で調子は良かったが、シーズンでは不調だった』という選手がいるというのは驚きです。僕の場合、他の17年は基本的にオープン戦の打撃成績が悪く、プレッシャーで死ぬ思いでした。開幕しても4月は低迷し、何とか5月くらいから上向いていくというパターンだったのです。毎年、春分の日を迎えると、『もうすぐ開幕だ。開幕は待ってくれないよなあ……』と絶望的な気持ちになる辛さは、今でも鮮明に記憶しています」(同・広澤氏)
ちなみに広澤氏が「オープン戦が絶好調」だったという90年のシーズンを振り返ってみると、打率3割1分7厘、ホームラン25本という記録だ。2回目となるベストナインに選出され、確かに広澤氏にとっては、オープン戦もレギュラーシーズンも共に充実した1年に終わったわけだ。
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