「不適切にもほどがある!」の真実 数字が示す“最も熱心な視聴者”は意外な層
「ふてほど」を構成する7要素
次に、どうして若い世代のほうが惹き付けられるかというと、ギャグ満載で青春ドラマの色合いもあるからだろう。このドラマをあらためて見直し、分析したところ、大きく分けて7つの要素で構成されている。ほかのドラマは大抵がせいぜい3~4要素だから、かなり多い。7要素は次の通りである。
1:市郎、小川純子(河合優実・23)、犬島渚(仲里依紗・34)、ゆずる(古田新太・58)による家族の物語
2:秋津睦実(磯村・2役)、向坂キヨシ(坂元愛登・15)、純子らの青春物語
3:EBSテレビのカウンセラー・市郎と同プロデューサー・渚、同リスクマネジメント部長・栗田一也(山本耕史・47)らによるギョーカイ物語
4:ギャグ
5:昭和後期と現代の文化・文明のギャップ
6:同じく価値観ギャップ
7:社会風刺
要素がこれだけあると、構成は難しくなるが、観る側を飽きさせない。青春物語にはキヨシの中学の同級生で不登校を続けるS君こと佐高強(榎本司・13)も加わったので、ますます見応えが増しそう。おまけにミュージカル付きで、遊び心もある。
哀しい話でも笑わせる高度なギャグ
ポップスやロックもよく使われることがあってか、日本人はミュージカルが苦手な人が多いとされる。しかし、このドラマのミュージカルのベースは大半が日本人の好む歌謡曲。これによって視聴者に受け入れられたと見る。
第3回でセクハラ問題が歌われた時には故・桑名正博さんの「セクシャルバイオレットNo.1」(79年)が使われた。思いっきりダジャレだった。
ギャグのセンスも抜群。これも若い世代を惹き付ける理由に違いない。第5回。市郎がショックを受けるのを避けるため、渚とゆずるが純子の死を隠した際のやり取りはまるで古典落語だった。ゆずるが目に入るものを使って次々と下手なウソをついた。笑わせてくれた。哀しい話で笑わせるのは高度なギャグである。
家族の物語も若い世代を引き込んでいるのではないか。家族に対する思い入れがあまり強くない若い世代はホームドラマを観ない傾向が強いが、このドラマは別格と見る。家族の描写がリアルだからである。
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