シェアサービスが突如終了で大炎上…「高級時計を他人に貸すなんて論外」と語るロレックスオーナーが、“すり替え”や“手荒な扱い”以上に許せない“行為”とは
偽物とすり替えられるリスク
まず、本物と偽物をすり替えられるリスクがあるということだ。つい最近も、銀座の腕時計専門店で、店員が目を離したすきに売り物の腕時計を偽物とすり替えられる事件があった。偽物は10年ほど前なら素人でも見分けがつくものが多かったが、その進化は著しく、今ではプロでなければ見分けがつかないレベルの品物が出回っている。このことからも、貸し出した腕時計が偽物にすり替えられ、返却される事態も容易に想像できる。
筆者は質屋を経営する知り合いから、「スーパースーパースーパーコピー」の腕時計を見せてもらったことがあるが、素人にはまったく見分けがつかないレベルであった。ましてや、腕時計を他人に貸し出してしまうような人は、こっそりすり替えられてもまず気づかないだろう。しかも、今ではそれより遥かに精巧な偽物が出回っているというから恐ろしい。
加えて、腕時計の中の機械(ムーブメント)やリューズなど、貴重なパーツを偽物と交換されるリスクもある。つまり、バレないように“パーツを盗む”のである。これはヴィンテージの腕時計で特に注意すべきことである。高級腕時計はパーツそのものにも価値があるのだ。中古市場ではパーツ単体でも流通しており、ムーブメントだけで数十万円という高額で取り引きされている例もある。
ロレックスの場合、ほとんどのモデルが裏蓋を開けなければムーブメントを確認できない。そのため、中身をこっそりすり替えてもバレにくいし、裏蓋を開ける道具と技術者がいれば簡単に交換できてしまう。それはオーナーから腕時計を預かった業者がやる可能性もあり得るし、店から腕時計をレンタルした個人がやってしまう可能性もある。
腕時計を雑に扱われてもいいのか
さらに言えば、高級腕時計を貸し出すと、傷をつけられたり、最悪な場合、壊されたりするリスクがある。何を当たり前のことを、と言われるかもしれないが、例えばスマホやパソコンに機械式腕時計を長時間近づけられると、ムーブメントが磁気を帯びてしまって故障の原因になる。トイレで手を洗っているときに、リューズから浸水してしまう恐れもある。腕時計を壁に打ち付けられてしまう可能性もある。
高級腕時計は細かいパーツを職人が組み上げて作る工芸品のような品物であるため、G-SHOCKと同じ感覚で扱うと壊れる。腕時計愛好家なら「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれないが、わかっていない人は想像以上に多いのである。
筆者は仕事で知り合った人が「高級腕時計を買えば、床に落としても壊れないし、安全ですよね」と言っていたのを聞き、衝撃を受けたことがある。なるほど、値段が高い=頑丈、というイメージを持っている人は少なからずいるようなのだ。ちなみに、値段が高い=時間が正確、もほぼ間違いである。
腕時計をレンタルする人が、こういった“常識”を共有しているとは考えにくい。したがって、どのように扱われるか想像もつかないから、預けること自体がリスクだらけである。おまけにこうしたトラブルは腕時計に大きな傷でもつかない限りバレにくい。だから絶対に貸してはダメなのである。こういった当たり前を当たり前だと思わないから、シェアリングサービスに預けてしまい、騙されてしまうのではないだろうか。
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