21歳「久常涼」ら3選手がマスターズに特別招待 物議を醸しても“フェアな評価”で選ばれたと言える理由
米国時間の2月21日、「ゴルフの祭典」マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルが、日本の久常涼など計3人の選手を「特別招待」すると発表した。批判的な意見も出る中、この3選手が特別招待された背景を解説する。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
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名手(マスター)たちが集うトーナメント
この発表を聞いて、久常本人はもちろん日本のゴルフファンも関係者も、「特別招待されるなんて素晴らしい!」と沸き上がったのは言うまでもない。
だが、ゴルフやマスターズのことをよく知らない人の中には、欧米の選手たちがマスターズの招待状の写真をSNSにアップしている様子を目にして、「彼らも特別招待されたのか?」「一体何人が特別招待されるのか?」等々、混乱している様子も見て取れる。
毎年マスターズを観戦しているような長年のゴルフファンにとっては周知のことかもしれないが、今回は「マスターズ招待」の意味やシステムの基本事項を簡単に紹介しよう。
マスターズを創設したのは、「球聖」と呼ばれながらも生涯アマチュアで通した米国人ゴルファー、ボビー・ジョーンズ(1902~1971)である。ジョーンズは投資家のクリフォード・ロバーツ(1894~1977)とともに、米ジョージア州オーガスタにオーガスタ・ナショナルを創設した。コース設計は名匠アリスター・マッケンジー(1870~1934)に依頼。そして、1934年にこの地で第1回マスターズが開催された。
大会コンセプトは「ゴルフの名手(マスター)たちが集うトーナメント」。だからこそ、その大会は「マスターズ」と名付けられ、創設者ジョーンズやオーガスタ・ナショナルから「あなたこそは名手(マスター)です」と認められ、招待されたゴルファーだけが出場できる。
20項目の出場資格
そのポリシーや姿勢は現在も継承されており、マスターズに出場する選手全員が「オーガスタ・ナショナルから認められ、招待されたプレーヤー」とされている。だが、オーガスタ・ナショナルから発表されるまでは誰が出場できるかがまったくわからない、というわけではない。あらかじめ定められている「マスターズ出場資格」を満たした選手は、その時点で出場が確定する。
しかし、実際にオーガスタ・ナショナルから送られてくる招待状を手にすると「マスターズに出られることを実感する」ようで、自力でマスターズ出場を確定させていたとしても、多くの出場選手が喜びを噛み締めながら招待状を披露するのである。
その「マスターズ出場資格」は、時代とともに少しずつ進化や変化を遂げており、現在は20項目が定められている。
トップに掲げられているのは、マスターズ優勝者(生涯)だ。それに次いで、全米オープン、全英オープン、全米プロゴルフ選手権という他の3つのメジャー大会優勝者(5年間)、プレーヤーズ選手権優勝者(3年間)、五輪ゴルフ競技金メダリスト(1年間)と続いていく。
全米アマチュア選手権の優勝者と2位、アジア・パシフィック・アマチュア選手権優勝者など、アマチュアの名手に出場資格を授けているところは、生涯アマチュアで通したジョーンズの魂が反映されている。
19番目には前年の世界ランキング50位以内、最後の20番目にはマスターズ前週時点での世界ランキング50位以内と記されている。
そして欄外に「マスターズ委員会は独自の裁量によって、これらの資格を満たしていないインターナショナル・プレーヤーを招待する」とある。これが今年、久常ら3選手に授けられた「特別招待」のことだ。
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