日本ハム、新外国人「10億円超」の大補強 他球団の編成担当は「二軍の選手に1億円以上の年俸を支払うのは……」と冷ややか

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「エスコンフィールド北海道」の経済効果

 ルーキー以外の新加入の選手を改めて見ると、高額年俸が目立つ。山崎は、ソフトバンクなど他球団と比較して、提示金額が低かったと見られているが、それでも4年総額推定10億円と言われており、大型契約であることは間違いない。外国人選手は、バーヘイゲンの3億5000万円を筆頭に、マーフィーが1億2000万円、ザバラとスティーブンソンが1億1000万円、レイエスが1億円。全員が年俸1億円を超えている。

 それに加えて、昨年から在籍するロドリゲスとマルティネスは年俸1億2000万円となっており、外国人選手7人の年俸総額は10億3000万円にも達する(金額は全て推定)。

 このような「大型補強」を可能にしたのが、昨年開場した新球場であるエスコンフィールド北海道の存在だ。

「札幌ドーム時代と比べて、本拠地の試合での収益が大幅に改善したことが大きいですね。これまでは外国人選手を含めた選手の“総年俸”が厳しく決められており、それを超えることは許されなかったのです。このため、実績のある選手がFA権を取得すると退団するケースが多かったですが、昨年のオフからは、選手補強にかなり資金を使えるようになりました。以前までの収益だったら、山崎福也や、他の球団も狙っていたレイエスらの外国人選手も獲得が難しく、加藤貴之の残留交渉は失敗していた可能性が高かったと思います」(日本ハムの球団関係者)

 昨年10月の球団発表によると、開場からわずか半年で来場者数は300万人を突破。コロナ禍前の2019年に9億5000万円だった営業利益は242%増の26億円を見込んでいるという。旧本拠地の札幌ドームでは、なかなか収益が上がらず、球団運営にかけられる費用が厳しく制限されていたというが、新球場の好調なスタートで収益構造が改善し、それを選手補強に当てられる。これは非常に健全なサイクルと言えそうだ。

新外国人の活躍は「正直、未知数」

 だからと言って、2年連続の最下位に沈んでいた日本ハムがいきなり優勝争いに絡むかというと、そんなに簡単な話ではないようだ。他球団の編成担当者は、以下のように指摘する。

「日本でも実績のあるバーヘイゲンはある程度計算できるかもしれませんが、他の新外国人については正直、未知数ですよね。ザバラはボールが速いけれど、コントロールが不安定でクイックも遅い。レイエスはパワーがありますが、典型的な『ホームランか三振か』というタイプに見えます。一軍に登録できる外国人選手は5人(ベンチ入りは4人)ですから、7人いれば2人は二軍ですからね……。二軍の選手に1億円以上の年俸を支払うことは、もったいないような気がします」

 近年は特に外国人選手の苦戦が目立つ。昨年、規定投球回数をクリアした外国人投手は1人もいなかった。一方、野手は、規定打席をクリアして打率10位以内に入ったのは、サンタナ(ヤクルト)のみだ。

 昨年の日本シリーズを戦った阪神とオリックスは、外国人選手への依存度が低くかった。近年、外国人選手の活躍でチームを大きく押し上げたケースは、ウィーラーやペゲーロ、アマダ―が揃って20本塁打以上を放ち、ハーマンがリリーフで大活躍した2017年の楽天(3位)くらいしか見当たらない。それを考えても、高額年俸の外国人選手が増えたから、ペナントレースを勝ち抜くと考えるのは、早計と言えそうだ。

 とはいえ、日本ハムは、野手では万波中正が昨年大ブレイクして打線の中心となり、投手陣も2年目の金村尚真、4年目の根本悠楓に成長の兆しがあり、既存戦力にも確実な底上げが見られる。外国人選手に依存し過ぎることなく、“勝てるチーム”を作ることができるのか。チームの将来を考えても、それが大きな注目ポイントとなる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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