妻が突然「別居したい」新住所すら教えてもらえず… 夫が彼女の会社に乗り込んで判明した、“ただの不倫”ではなかった衝撃の事実

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社長が亡くなって、妻は…

 卓浩さんは衝撃のあまり、それから数日間、寝ることも食べることもできなくなり、自ら救急車を呼んで搬送された。死んでもいいと思ったし、妻には知らせるまいと考えていたが、いざとなると恐怖感が増し、病院から妻に連絡してもらった。

「美智香は駆けつけてきました。『ちゃんとごはん食べてって言ったのに。食べてなかったんでしょう』って。どこか悪いわけではなく、脱水症状を引き起こしていたみたいです。妻は僕の手を握って『ごめんね。やっぱり私が悪い』と。『聞いたよ、すべて』と言うと、『私も澄美子ちゃんから聞いた』って。離婚したいのかと言うと、私はしたくない、落ち着いたら帰りたい。あなたが許してくれるならと妻は言いました」

 それから5ヶ月ほどたって社長は亡くなり、美智香さんは「家に帰ることをどう思うか」とメッセージしてきた。

「悩みました。僕に決定権を委ねるのか……。きみはどうしたいんだと聞いたら、帰りたいと言う。あとは僕が受け入れるかどうかだけですよね。でもそれを決めなければいけないのは残酷だねと伝えました。そうしたら彼女、その日のうちに戻ってきたんですよ。わかった、あなたに決定を委ねない。私が決める。私は帰ってきたと」

妊娠したから結婚しただけだったのか

 その日から自分の葛藤が始まった、いや、前からあった葛藤がより深くなったと卓浩さんは苦しそうにつぶやいた。妻と亡くなった社長との関係はどのくらい、どうやって続いていたのか、妻はどのくらい社長を愛していたのか。家族よりも? 自分よりも? そもそも彼女は僕を本当に必要としていたのか、妊娠したから結婚しただけだったのではないだろうか。彼の苦悩はとどまるところを知らなかった。

「ただ、心のどこかで美智香の姿を毎日見られることに安堵していました。だからといって諸手を挙げて彼女を受け入れられるわけではない。あれから半年ほどたって、日常生活は滞りなく進んでいるけど、これでいいのかどうかはわからないんです」

 今年の正月、息子は帰ってこなかった。来年は息子も大学を卒業するが、彼はそのまま大学院進学を望んでおり、家族3人での生活はもう訪れないかもしれない。妻は彼の顔色をうかがうような言動はとらない。開き直っている様子でもない。

「つい先日、聞いたんです。きみは今、どういう感情で僕に接しているのかと。彼女は『いつか私たち、ちゃんと話し合わないといけないわよね。これだけ長くつきあってきたあなたに私はたぶん、ひどいことをしたんだと思う。言い訳はしたくない、でも言わないとわかってもらえないこともある』って。その後、ただ、今は生々しくて話せないのとうつむいたんです。あ、彼女は社長がいなくなったことを悲しんでいるんだと改めて実感しました。彼を愛したから夫である僕とは性的関係を結ばなくなった、だけど彼はかなり長い間、病と闘っていたとあの後、娘の澄美子さんから聞いたんです。ということは彼とも関係をもってない時間は案外長いのかもしれない。肉体の関係なんて、実は彼女にとってはどうでもよかったのかもしれないし……。彼女が今、自分があの件について言葉を発しても、気持ちが整理されていないから誤解を生むことのほうが多いと言いました。それはそうなんだろうと僕も思います」

 だからあえて聞かないし言わない。ふたりは今、仕事をしながら日々の生活をごく普通に送ることしかできないのだろう。

「暖かくなったら、息子のいるところに旅行して案内してもらおうかという話をしています。僕ら、行ったことがないんですよ。こうやって一歩ずつ、またふたりで寄り添いながら歩いていくんでしょうか、あるいはいつか僕が許せなくなって夫婦は崩壊するんでしょうか」

 結論を急ぐのはやめようと彼は決めたようだ。ふたりそれぞれの気持ちを落ち着かせるためには、ある程度の時間が必要なのかもしれない。

前編【学生結婚してから10年、妻の不審な行動の数々に「不倫しているのでは」 その時、44歳夫はどう対処したか】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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