学生結婚してから10年、妻の不審な行動の数々に「不倫しているのでは」 その時、44歳夫はどう対処したか

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少しずつ不審な振る舞いが

 ただ、その時点で卓浩さんに疑問が生じなかったわけではない。妻の言動が目に見えないくらい少しずつ変わっているのを彼は実感していた。

「以前から夜でも仕事の連絡をとっていることはあったけど、そういうときは電話を切るとすぐ、『こんな時間に仕事の話なんて聞きたくないわよね』と言いながらも、その仕事にいかに自分が力を入れているかを話してくれたりしていたんですよ。こっちは聞きたいわけじゃないけど、仕事の話になると妻は生き生きするので、その話しぶりを見ているのは楽しかった。でもだんだんそういう夜の仕事の連絡については何も言わなくなった。月に1度くらい週末も仕事だと出かけていくことがあった。そして息子のことを放っての深夜帰宅でしょ。男か……と思いました。実は学生時代、つきあっているときにも妻の浮気疑惑はあったんです。そのころのことを思い出しました」

 妻は僕と違ってモテたから、と卓浩さんはため息をついた。学生時代からの妻の写真を、彼はスマホを開いて見せてくれた。彼の写真ファイルは、妻と子で埋め尽くされている。

疑念を押し殺して

 美智香さんは、確かに魅力的な女性だった。どの写真も、美智香さんの大きな笑顔があった。

「つきあって25年、結婚して22年。それでも僕は、出会ったころと同じように美智香が好きです。ただ、美智香のほうはそうではなかった。結婚して恋人が夫に変わり、子どもが生まれて父に変わった。僕の役割が変わるたびに、美智香の中で僕への気持ちも変化したんでしょう。息子が生まれてからは寝室も別になりました。家族としての親しみはあったと思うけど、彼女は僕を男として見なくなった」

 寂しかったと彼は言う。妻とふたりで出かけたいと思っても、妻は近所で食事をしようと提案した。子どもが気になるからだ、と。普段着で近所の居酒屋に行くのが定番となったが、彼はときにはおしゃれしてふたりで出かけたかった。何度も言ったが、笑って拒否された。

「8年ほど前、僕の父が亡くなったんです。うちの両親は昔ながらの夫婦関係で、母は父に支配されているように見えていました。父が闘病半年ほどで亡くなったとき、母はよほどうれしかったんでしょう。黙っていてもニマニマと笑みがこぼれるような状態だった。姉が母をたしなめていましたが。その後、母は元気に生き生きと暮らしています。ただ、僕自身は父からは学ぶことも多かったので、父が亡くなったときはショックでした」

 通夜の晩、彼はひとりで父の亡骸と過ごした。母も姉もさっさと帰ってしまったのだ。父をひとりにしておくのは忍びなかった。美智香さんはそんな彼につきあってくれた。

「翌日、朝早くから会議だと言っていましたが、それでもずっと僕に寄り添ってくれた。『男の子と父親って、いろいろあるんでしょう』と言ったので、僕は父との思い出を語りました。小学校を卒業するまで毎年夏に、父とふたりで自転車で旅をしたこと、父はキャンプを通して生きる力を教えてくれたこと、その一方で女性に対しては不信感をもっていたこと、それは父の母がかつて浮気をして家を出ていったことに原因があったことなど。父は僕だけに心を開いていたのかもしれない。父の女性観は賛同できないけど、気持ちはわからなくはないと言ったら、美智香は『そうね、裏切られていたら当然よね』って。そんな美智香だからこそ、外で恋をしているのかもしれないと疑惑が生じたとき、僕はその気持ちを封印しようとしたんです。美智香に限って、そんなことがあるわけがないと」

 だが、卓浩さんの知らないところで、美智香さんの恋は煮詰まっていた。

後編【妻が突然「別居したい」新住所すら教えてもらえず… 夫が彼女の会社に乗り込んで判明した、“ただの不倫”ではなかった衝撃の事実】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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