ファクシミリは命令形の言葉だった…話題の新書「世界はラテン語でできている」が売れる理由

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ここにも、あそこにもラテン語

 本書は全部で6章構成。「ラテン語と世界史」からはじまって、「政治」「宗教」「科学」「現代」「日本」と、6つのテーマに分かれている。順番に読んでいく必要はなく、どこからでも読めるようにできている。

「興味のあるところを自由に読んでもらえるよう、とにかく話題を広げられるだけ広げました。どんな方でも、必ず喰いつける話題が、どこかにあるはずです」

 そこで、さっそく試しに、パラパラとめくって勝手なところを開いてみた。すると、夏の高校野球、優勝旗の写真が載っているページが目についた。その優勝旗にある言葉――《VICTORIBUS PALMAE》。あまりじっくり眺めたことのある方はいないだろうが、これがラテン語だそうで、意味は「勝者に栄誉あれ」。

 次はおなじみ、巨大フリマ・サービスの「メルカリ」。これはズバリ、ラテン語《mercari》で、意味は「取り引きする」。

 英語の《vote》(投票)を、中学か高校で習ったのをご記憶の方も多いだろう。いまも政治ニュースで「キャスティング・ボートを握る勢力」なんて使われている。これもラテン語《votum》から。意味は「願い」で、本来は「神への誓約」などの意味があったという。これを知ったら、ちゃんと投票に行かねばならない気分になりそうだ。

 そういえば、先の編集者は、「本書中、特に圧巻だったのは、『政治』の章の、『ファシズム』の語源解説でした」と言っていた。

「ムッソリーニからファシスト党にさかのぼり、いつしか“木の棒を束ねる”話になって、ローマにあるオベリスクの解説につながって、東京の日比谷公園に舞台が移る。叙事詩のような壮大な解説を、実にコンパクトにまとめている。これを読むと、国会論戦などで、軽々しく『ファシズム』云々なんて口にしているのが、たいへんレベルの低いことに思えるでしょう」(編集者)

 ちなみに、音楽ライターのアタクシとしては、しばしば行く「東京国際フォーラム」「川口リリア・ホール」、大井町「きゅりあん」、映画館が入っている「有楽町イトシア」などが、すべてラテン語由来の名称だと知って、身が引き締まる思いでありました。

 また、コミック同人誌即売会「コミティア」が、てっきり「コミック」が由来かと思いきや、古代ローマ民会《comitia》だったというのは、衝撃でありました。

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