「私たちは黒子の中の黒子…」皇族警護のスペシャリスト「警視庁警衛課」の実態、皇宮警察との違いとは
旧陸軍・近衛師団の〝後継〟?
同要則第一条では「天皇の行幸、皇后、皇太后、皇太子及び皇太子妃の行啓並びにその他の皇族のお成りの場合」の警衛について規定されているが、要則の制定段階では上皇、上皇后、皇嗣、皇嗣妃は定めがなかったため、現状は「天皇、上皇の行幸」「皇后、上皇后、皇嗣、皇嗣妃の行啓」といった表現になるだろう。
また警衛の主体は同第三条で「都道府県警察(が実施する)」とされており、同条三項で「皇宮警察及び都道府県警察は、警衛を実施するに当たり、緊密な連絡を保ち、相互に協力しなければならない」と決められている。これを踏まえて昭和三十八年に制定された都公安委員会規則の「警視庁組織規則」は第二十三条で〝都警察〟に該当する警視庁の警衛課についての分掌事務(受け持つ業務)を「警衛に関すること」と「皇居、御所及び官邸(宮邸)の周囲の警備に関すること」としている。
戦前、旧宮家の閑院宮載仁親王もトップを務めた陸軍にあって、特に名誉なエリート部隊「近衛師団」とタッグを組んで皇居の警備を担当した皇警の、現在のパートナーが警衛課なのである。
警衛課の関係者は、
「都県をまたいだ活動が特別に認められていて、私たちと同じ(警視庁)本部の十六階にいるSPや、国家公務員の皇警さんと違って、東京都の地方公務員なので、私たちのテリトリーは東京のみです」
としたうえで、こう語る。
「ですが、東京には御所や宮殿が入る皇居、仙洞御所や複数の宮邸が入る赤坂御用地、常陸宮邸、寛仁親王妃信子さまが住まわれる宮内庁分庁舎が全て集中しています。全国四十七都道府県警の中でも警衛のウエイトは圧倒的です」
SPはセキュリティーポリスの略称で、有力政治家らのボディーガード役を任された警備部警護課の課員。そして、同じ皇室守護のスペシャリストではあるものの、専従機関で半永久的に警衛の職務へ取り組む一点集中型の皇宮護衛官に対し、交番勤務も経験し「街のお巡りさん」としての広い視野を身につけつつ実践を積むエキスパート型が警衛課員だ。在任中はお忍びのプライベートな時間帯を含めて一年三百六十五日、警戒警備の警衛業務に当たっている。
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