7カ月以上放置! 日本政府はなぜ中国の「不法ブイ」を撤去しないのか 「潜水艦運用に利用される」

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「海洋強国を目指す」

 ところで、経済発展を果たした国家は必ず海洋に目を向ける。海洋は豊富な資源の宝庫であり、かつ自国と各国とをつなぐ交易路としても重要だからだ。それは中国も例外ではない。習近平が「海洋強国を目指す」と宣言した通り、すでに中国は大陸国家から海洋国家へ変貌しようとしている。

 だが、かの国の海洋進出は国際法を無視し、国際秩序や順守すべきマナーもわきまえない。とくに東シナ海や南シナ海において多くの無法な事案が確認されているように、彼らのやり方は力による現状変更方式だ。そのため、日本や米国、オーストラリアといった伝統的な海洋国家と衝突する。

 加えて中国は経済成長を果たしたが故に、最大の経済大国である米国にとって最強の競争相手と化した。これにより、米中は衝突コースに入った。戦前の日米対立と同様、米中の対立は「歴史上の大きなうねり」によるもので、生半可な対応策では回避できない。

 最近の習近平の心境を推し量れば、「米国と対決せざるを得なくなった中国を率いることになってしまった自分」というものではないか。私は習が自ら好んで米国との対決に臨んだのではないと考えている。繰り返すが、これは人知を超えた歴史のうねりなのだ。

 振り返れば、米ソ冷戦時代の“対立の第1戦線”はヨーロッパ大陸だった。が、米中対立となれば舞台は海洋になる。すなわち太平洋、東シナ海、そして南シナ海だ。中国が海洋で米国と対峙・対決する上で必要不可欠なのは、東シナ海から南シナ海を囲む、いわゆる第1列島線の内側を固めることだ。

 具体的には第1列島線内を、排他的にコントロールできる態勢を確立することといえる。有事の際に米軍をこの域内に入れない態勢の構築であり、この戦略はA2/AD(接近阻止・領域拒否)と呼ばれる。

南シナ海のほぼ全域が中国の“管轄海域”

 中国は昨年8月に「2023年版標準地図」を公表した。そこでは東シナ海と南シナ海のほぼ全域が中国の“管轄海域”とされている。そもそも国際法には管轄海域という概念自体がないが、中国は独自の海洋戦略に基づいて管轄海域なるものを設定しているのだ。

 中国がこうした海洋における国家目標を達成するには、三つの解決すべき問題がある。(1)香港、(2)台湾、そして(3)尖閣諸島だ。これらはすべて第1列島線の中国側に位置している。

 ここで改めて香港について説明しておくと、1984年にトウ小平と英国のサッチャー首相の間で基本合意が交わされ、香港は1997年に英国から中国に返還された。条件は「中国の社会主義を実施せず、資本主義制度は50年間維持される」という一国二制度の堅持であった。

 これは資本主義を謳歌する、“明るい香港”を半世紀にわたって保障するというものだった。この点について、私はトウが最初からサッチャーをだまそうと考えていたとは思わない。むしろトウは英国と本気で「一国二制度50年」を約束したはずだ。なぜなら当時の中国には隣国のソ連が潜在的な脅威であり、米国と友好関係にある英国を敵とは見なしていなかったからだ。従って、第1列島線のような構想はトウの頭にはなかったのである。

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