7カ月以上放置! 日本政府はなぜ中国の「不法ブイ」を撤去しないのか 「潜水艦運用に利用される」

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7カ月以上たった今も放置

 今回、ブイを設置した中国の海洋調査船「向陽紅22」は中国浙江省寧波市を出港後、時速約7ノット(約13キロ)という遅い速度で航行。設置後は、往路の2倍以上の時速14ノット(約26キロ)で引き返していたことが船舶自動識別装置(AIS)のデータで明らかになっている。

 昨年9月24日付の産経新聞は、AISを搭載した船舶の運航情報などを提供するマリントラフィック社のサイトを基にした独自の分析結果を報じた。それによると、「向陽紅22」は7月1日午前11時ごろ、寧波市の沖合から出港。2日午後5時ごろに日中中間線から日本側に1キロ程度入った北緯26度4分、東経122度44分でほぼ停止した。同船はおよそ1時間半後に中国へ引き返しており、この間、ブイを設置したとみられるという。

 無論、日本政府は中国政府に抗議し、即時撤去を求めた。が、7カ月以上たったいまも放置されたままだ。中国は最近も、南シナ海で実効支配するスカボロー礁周辺に、浮き球を連ねた全長300メートルの浮遊障壁を設置した。スカボロー礁は中国のほかに台湾とフィリピンが領有権を主張している。昨年9月25日には、フィリピン政府が「スカボロー礁はフィリピンのEEZ内にある」として浮遊障壁を撤去したことを発表した。

 国連海洋法条約では、構造物の設置や科学的調査の実施はEEZを管轄する国にしか認めていない。当時の松野博一官房長官は、9月19日の会見で「EEZでわが国の同意なく構築物を設置することは国連海洋法条約上の関連規定に反する」と指摘した。そのうえで外交ルートを通じて中国政府に抗議するとともに、即時撤去を要求。さらに松野氏は「領土、領海、領空を断固として守り抜くとの考えのもと、毅然かつ冷静に対処していく」と決意を表明したものの、それはブイの発見から実に2カ月を経た後であった。

ブイの撤去も条約違反ではないという解釈が

 その後、11月1日の参院予算委員会で、上川陽子外相がこの問題について答弁に立った。質問者は日本維新の会に所属する東徹議員である。東氏のブイに関する中国側の対応についての質問に対し、上川氏は中国独自の主張に基づく立場の表明があったことを明かした。その上で、次のようなやり取りが交わされた。

東:中国に撤去を求めても中国が撤去しなかった場合、これは日本独自でやっぱり撤去するべきと思いますが、いかがですか。

上川:ブイの撤去等につきまして、国連の海洋法条約には明文の規定がございません。個別具体的な状況に応じて検討をすることが必要でありまして、その可否につきましては一概にお答えすることは困難と考えております。

 この答弁に次いで、上川氏は外交ルートを通じて中国側に撤去要請を続ける考えを示したが、中国がそれを受け入れる可能性がゼロに近いことは言うまでもない。

 上川氏の〈撤去について国連海洋法条約に明文の規定がない〉との指摘はその通りだ。が、規定がないのであれば、ブイの撤去も同様に違反しないとの解釈が成り立つ。仮にブイの撤去が条約に違反するなら、フィリピン政府は堂々と国際法違反を犯したことになる。

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