かまやつひろしはなぜ「ブルー・コメッツはずるい」と言ったのか メンバーの三原綱木が振り返るGSブーム、井上大輔、郷ひろみと紅白のバンマス
「紅白」で演奏前に消えたギター奏者
86年にニューブリードのバンドマスターになると、やはりメンバーを明るい人に限定する。こちらのバンマスとしても成功を収めたが、苦労はあった。
「ある演歌歌手の曲を演奏したとき、なぜかマイナー(短調)の曲をメジャー(長調)で演奏したメンバーがいましたね」
それでは曲調がまるで違ってしまう。演歌歌手は戸惑っただろう。「紅白」ではもっと大きなことが起きた。
「ある曲の演奏は冒頭がガットギターだったんだけど、音がない。飛んでしまった。どうしたのかと思ったら、奏者が出番を間違えて、喫煙所でたばこを吸っていた。この失敗は許されない。辞めてもらいました」
「紅白」は進行が遅れると、歌を早め、時間を取り戻す。業界用語の「巻く」という作業である。指揮者によっては歌手にかなりハイテンポで歌わせる。しかし、三原氏はそれをやらない。
「僕の考え方として、イントロは速くしてもいい。だけど、歌に入ったら、ちゃんとしたテンポにしなくてはならない。そうしないと歌手の方に失礼。歌手は2分半とか3分で勝負しているんです」
自分も歌い手だった三原氏ならではの拘りだろう。三原氏はブルコメが67年にヒットさせた「北国の二人」などでメインボーカルを担当していた。
ブルコメの名前を残すために
長男の三原宏之(41)もミュージシャンだ。「YELLOW」(2019年)などで知られるファンタゼロコースターのギタリスト兼ボーカル。意外や三原氏がギターを教えたことは一度もない。
「なぜなら、僕の時代と今ではギターの弾き方が違うんですよ。だから本人には『ギターを教わりたいのなら、若い先生を紹介するから』って言いました」
高いレベルにいる人ほど弾き方の変化に敏感なのである。
これからの夢はブルコメのキーボード奏者だった小田啓義氏(84)とブルコメの名前を残し続けること。レコ大受賞時に5人いた実質上のオリジナルメンバーは3人が他界し、2人になっている。
ブルコメの名前を残す意味もあり、5月29日と30日にはライブ 「THE G.S 栄光のグループサウンズ」(東京・渋谷、LINE CUBE SHIBUYA)に臨む。パープル・シャドウズの今井久氏(77)、ザ・ゴールデン・カップスのミッキー吉野氏(72)ザ・ワイルドワンズの鳥塚しげき氏(76)らが一堂に会する。
「僕個人としてもギターを弾き、歌い続けていきたい。若い人ともコラボレーションしたいですね」
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〇主なGSと代表曲/ザ・スパイダース「夕陽が泣いている」(66年)、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「ブルー・シャトウ」(67年)、ザ・タイガース「シーサイド・バウンド」(同)、ザ・カーナビーツ「好きさ好きさ好きさ」(同)、ザ・テンプターズ「涙のあとに微笑みを」(68年)、オックス「ガール・フレンド」(同)、ザ・ジャガーズ「キサナドゥーの伝説」(同)、パープル・シャドウズ「小さなスナック」(同)
〇「THE G.S 栄光のグループサウンズ」問い合わせ電話番号:03(3226)9999(MIN-ONインフォメーションセンター)
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