世界卓球で絶対王者に肉薄! 打倒中国を目指す「女子五輪トリオ」に求められる“3つの進化”とは?
ツボにはまれば中国選手も飲み込む脅威
一方、今回の世界卓球で全試合に勝利し、充実のパフォーマンスを見せたのが平野だ。伊藤美誠(23)と長きにわたり繰り広げたパリ五輪代表争いでは、選考ランキング2位の座を最後まで死守し、前回は石川佳純さんに敗れて逃したシングルスの出場権を初めて獲得した。
苦しさと隣り合わせだった五輪選考レースから“解放”されたのが功を奏したか、今回の世界卓球では大会を通して安定した戦いを披露。持ち味のバックハンドは強弱を織り交ぜたレシーブが光り、巻き込みサービス、機を見てのフォアハンドなど、平野らしいプレーを存分に垣間見た今大会だった。昨年は孫穎莎に勝利を収めた平野だが、今大会でも中国戦で3番手として出場し、世界3位の王芸迪相手に圧巻のストレート勝ち。この平野の勝利により、日本の金メダル獲得へ流れが傾いたと呼べる衝撃がそこにはあった。
そんな平野だが、どの大会でも安定して上位に入る早田と比較すると、格下相手に取りこぼしたり、自らのミスから崩れてしまうこともあった。今大会でもイランとの第2戦では大会前の時点で世界709位だったアシュタリの粒高ラバーに大苦戦。2ゲームを連取され、大金星献上の手前まで追い込まれた。しかし、五輪選考レースで培われた局面での粘りと気持ちの強さで形勢を逆転させ、その後の勝利につなげた。ツボにはまれば中国トップ選手を飲み込んでしまう脅威が平野にはある。五輪本大会に近づくなかでその好調を維持し、流れに乗れるかが日本女子の金メダルへも関わってくる。
張本の進化がチームの戦力アップに直結する
そして、日本女子のパリ五輪金メダル獲得に向けて、最大のキーマンと呼べるのが15歳で初選出となった張本だろう。選考レースでは終盤の第6回選考会で初優勝、全日本選手権で2位に食い込み、五輪2大会連続メダリストの伊藤を逆転してパリ行きを勝ち取った。
迎えた初の世界卓球では、デビューとなったルクセンブルク戦で60歳のレジェンド、ニー・シャー・リエンとの“45歳差対決”を制し、国内外の大会で見せてきた勢いを世界の舞台でも披露した。さらに、準決勝の香港戦からは1番手を任され、相手のエース、杜凱琹相手に2ゲームを連取される苦しい展開も逆転。相手の戦い方をみて自分の技術を駆使できる戦術面の成長が張本の躍進を支えており、15歳ながら世界ランク15位に入る現状がそれを示している。
飛ぶ鳥を落とす勢いの張本に求められるのは、世界トップ選手を相手にした経験値。昨年からの張本の成長を加速させたのが、木原美悠(19)とのダブルスで銅メダルに輝いたアジア競技大会や、孫穎莎とフルゲームの激闘を演じた「WTT女子ファイナルズ」。バックハンドを中心とした安定したラリーや、女子選手では珍しいYGサーブなど多彩なサービスを操る張本の総合的な能力が、高いレベルの舞台を経験することで磨きがかかった。世界トップ10も視界に入り、伸び盛りの張本の進化はそのまま日本女子の戦力アップにもつながるだろう。
早田、平野、張本という五輪メンバーに名を連ねた3人が躍動した今回の世界卓球。最強中国を決勝で苦しめたことで、パリ五輪での金メダル獲得にも期待が膨らんできた。そのために求められる三者三様の進化で、7月に迫った本大会までにどれだけチームの総合力を高められるかが残りわずかな期間ではカギを握る。中国に脅威を与えた史上最強の3人がパリで躍動し、金メダルに輝く瞬間が見られるのか。