毒殺未遂、プーチン大統領の豪邸を暴露… 反体制派指導者のナワリヌイ氏の生きざまを取材した記者が明かす【追悼】

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「階級闘争につながりかねない」と政権が危険視

 13年にはモスクワ市長選挙に立候補。敗れたものの2位で約27%を得票した。

「ナワリヌイ氏を直接取材したことがあります。ジョークがうまく演説もキレがいい。支持者をうまくのせて、あおっていく感じもしました。身長は190センチほどあり集会でも目立ちます。若い人たちのカリスマ的存在でした」(佐々木氏)

 汚職の告発も続けた。

「要人の不正蓄財などが暴露され、国民との富や機会の異常な格差が明確になると、不満がやがて階級闘争につながりかねないと政権は危険視し出した」(名越氏)

 当局は活動に圧力をかけ、18年の大統領選挙では出馬を認めなかった。

 こうして毒殺未遂に遭う。拘束されると分かっていて、21年1月に帰国。協力者の支援を得て、黒海沿岸にある豪邸をプーチン大統領のものと暴露する動画を公開。10日で1億回も視聴された。

「21年1月、彼の行動を支持するかという独立系機関の世論調査で支持19%、不支持56%、知らない13%となっています。熱烈な支持者がいる一方で、冷めた目で見られていることを示します。国営メディアが彼をおとしめるような報じ方をする影響もあります」(佐々木氏)

「殉教者になることを政権は危惧している」

 率いる団体が「過激派組織」に認定され、刑期が大幅に延長。昨年12月、北極圏にある刑務所に移された。弁護士を通じて政権批判を続けたが、反体制派は崩壊に近い状態だ。

 当局の発表では、2月16日、ナワリヌイ氏は散歩後に気分が悪くなり意識を失い、医師が蘇生措置を施したが、死亡を確認したという。突然死とされ、享年47。

 22年公開の映画「ナワリヌイ」はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した力作だ。同作の中で、もし殺されたら、と問われ、「私たちの力が巨大なので、彼らは私を殺すと決めたということだ」などと語った。

 全国で慰霊の献花に訪れた人が拘束されている。

「モスクワで支持者が献花している場所は、ソ連時代に政治弾圧された犠牲者を追悼するモニュメントです。政権はナワリヌイ氏が殉教者になることに神経をとがらせています」(佐々木氏)

週刊新潮 2024年2月29日号掲載

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