「突然、事務所が閉鎖され着る服がない」 韓国でK-POP練習生になった日本人男性を襲った悲劇

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たった一人の練習生

 でも契約してしまったものはしょうがない。どうすればこの状況を前向きに捉えられるだろうと悩んだ末に、今ある環境の中で自分にできることを精一杯やることにした。

 そう思えたのは、毎日が新しい発見であふれていたからだろう。韓国語も分かるようになってきて会話ができる喜びを感じ、韓国と日本の文化の違いに驚き、歌って踊れる環境があることへの有り難みを感じる日々が、この状況でもやってみようと思わせてくれた。

 その後も半年ほどはミンスヒョンと二人で毎日練習に励んだ。

 途中、ダンスも歌も未経験で全く芸能界に興味のない投資家の息子が入ってきたけど、1ヶ月もしないで来なくなったし、事務所を紹介してくれたレナさんのグループの新メンバーだという人と一緒に練習した時期もあったけど、その方もすぐに来なくなった。皆すぐに辞めていく現状に、僕もその頃になると今いる会社が普通ではないことに少々勘付いてはいて、今後どうするべきか真剣に悩み始めていた。ミンスヒョンも同じような悩みがあったのだろう、その頃から会社を休みがちになっていき、やがては来なくなった。こうして僕はたった一人の練習生となった。

 そんな時に突然、会社の練習室に入れなくなった。

突然なくなった練習室

 秋が終わりかけていたある日、いつものように出勤しようと会社に向かう。会社はとある建物の地下にあったので階段で降りる必要があったが、シャッターが下りていて入れない。

 何があったのか状況を理解できず室長に電話をした。室長は代表に確認するから待っていてと言い、一度通話を終えた。すぐに折り返しの電話が掛かってきたので出てみると、思いも寄らない一言が待っていた。会社が差し押さえられたらしいとのことだった。状況が掴めないまま僕も直接会社の代表に連絡し状況を説明してほしいと頼んだが、濁した返事しか返ってこない。

 僕は2畳ほどのコシウォン(下宿所)に住んでいたので、冬服や普段使わないかさばる物は会社の倉庫に置かせてもらっていた。室長やレナさんも同様に練習着や練習靴、その他私物を更衣室に置いていたので僕らはパニックになった。

 突然こんな事態になるということに衝撃を受けたが、それよりもなぜそこまで会社の経営が悪化していたのか、荷物はどうなるのか、教えてもらえない状況に不信感と怒りの感情が大きくなっていった。

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