バブルの再来? 株価4万円目前だが専門家が「投資は控えるべき」と語る理由
「楽観視できない」
しかし、違う立場から市況を眺める向きもある。
「日経平均が連日最高値を更新し、日経新聞や証券会社はお祭りムードですが、私は現在の相場について楽観視はしていません」
とはインフィニティ合同会社チーフ・エコノミストの田代秀敏氏だ。
「企業の生産能力をもとにどれくらい経済成長できるのかを示す“潜在成長率”という指標があるのですが、89年の日本の潜在成長率は4%以上でした。しかし、その数字はその後どんどん下がり、2004年以降は地を這うようにずっと1%未満が続き、アベノミクスでも上昇させられませんでした」
実際、現在の日本経済の低成長ぶりは、物価変動による影響を取り除いてその年に生産された財の価値を示したGDP(国内総生産)、いわゆる「実質GDP」の推移を見ても明らかだという。
「23年10~12月期の実質GDPは、前期(7~9月期)より0.1%減りました。2四半期連続のマイナス成長であり、それはすなわち景気の後退を意味します。要するに、今の株高は実体経済を反映していないのです」
株式市場ばかりが盛り上がっている
株は上がれども、庶民の生活が一向に上向かない理由については、経済産業研究所の竹森俊平上席研究員の話も示唆に富む。
「80年代後半の日本経済がそうだったように、株価が上昇すれば消費も活発になるのが普通ですが、現状はそうではなく株式市場ばかりが盛り上がっています。その理由は80年代のバブル期とは違って、現在株価を押し上げている要因が海外からの投資だからです」
続けて、
「米国のFRB(連邦準備制度理事会)がインフレを背景に金利を引き上げる一方で、日銀は金融緩和策を維持しています。そのため、日米両国の金利差が開き、円安基調になっている。結果として日本株に割安感が生まれ、海外投資家が日本株を買い、株価上昇を招いています。株高によって国内企業は資本調達がしやすくなり潤っていますが、国内家計はあまり豊かさを感じていません」
さらに言うには、
「現在の株価は日米の金融政策の違いから、日本の金利が米国に比べ低いのが要因。今後、両国の金利差が縮小すれば一時、円高株安になりかねない。ただし金利差はゼロにはならないので、当面の間は、円安株高傾向は続きそうです」
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