願望を口にする大事さを再確認 「ライブやってくださいよ」の一言で大物バンドのライブが実現(中川淳一郎)

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 2月9日、佐賀県唐津市でバンド「NONA REEVES(ノーナ・リーヴス、以下「ノーナ」)」のライブが開催されました。結成から29年、インディーズデビューから28年、メジャーデビューから27年のバンドですが、「願望を述べることって大事だな」という気持ちを改めて抱いたのでした。

 今回バンドの全国ツアーの一環として唐津で開催されたのですが、きっかけは昨年11月にジャーナリスト・津田大介さんの誕生会でノーナのフロントマン・西寺郷太さんに再会したことにあります。元々1973年生まれの男だけが参加できる飲み会で、われわれは初対面となりました。

「お久しぶりです~」から始まり、さまざまな話をする中、「今度唐津でライブやってくださいよ~」と言ったらこう返ってきました。

「2月10日(土)に博多・天神、11日(日)に小倉でやります。その前日の9日、もしかしたらできるかもしれません」

 というわけで、私は唐津のイベントを次々と手がける友人・山崎幸治さんに相談したところ、あれよあれよという間に会場に話をつけ、音響や照明も押さえた。そして、ノーナのツアーTシャツやポスターの発注期限までに無事唐津の情報を入れ込むことができたのでした。

 私も広告会社の会社員時代はイベント運営に携わってはいたものの、しょせんは下っ端の立場。上司の命令で体を動かすだけでしたが、今回は私が告知やら新聞社の取材依頼などをやったわけです。おかげさまで80人近い人数が参加し、大盛況のうちに幕を閉じたのでした。

 当日は唐津の友人が受付やTシャツ販売、撮影を担当してくれたのもこれまた思い出深い。西寺さんとは前日朝、唐津城へ行った後、やたらと元気な79歳のおばちゃんが経営するうどん屋でビールを大量に飲んだのでした。

 冒頭の「願望を述べることの大切さ」ですが、相手あっての話だからもちろん相手が承諾しなくては実現しないものの、意思表明をしないともっと実現は遠のくわけです。

 ライブ翌日の2月10日、タイ・バンコクに来たのですが、ここでも同じことを経験しています。昨年は2月6日から5月8日までいたのですが、寒い日本の冬から脱出して常夏の国で過ごすことが思いのほか快適だと気付いてしまった。

 というわけで今年も行くことをあらかじめ宣言していたら、行きつけの屋台の女将(おかみ)さんとその娘さんが「私らも行くばい」と言う。続いては昨年もバンコクに来た福岡のT氏も来ることに。東京で1週間前にあった私のイベントに来てくれたH氏も、来ることに。サッカーアジアカップのためカタール行きの予定があったのですが、日本が敗退したため時間が空き、JALのマイルがたまってるから、とファーストクラスでバンコク到着。さらに、元日ご自宅にお邪魔した薬剤師母子のお母さんまで2月11日に来ることに。

 なんと、私の妻と合わせて総勢7人でのバンコク集合になったのです。いずれの人々も願望を述べたため、無事楽しい特別な時間となったのですね。話すだけならばタダです。だから言う。「いつかこの4年間のバカ騒動を題材に寓話を書きたい!」と。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年2月29日号掲載

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