爆死扱いの永野芽郁「月9」にスポンサーは不満なし? 覆い隠せなくなった「世帯視聴率」の矛盾

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もしも世帯視聴率時代が続いていたら

 1970年代にはTBS「なんたって18歳!」(1971年)など午後7時台にティーンズ向けドラマが数多く放送されていた。また、同8時台には日本テレビ「飛び出せ!青春」(1972年)などの青春ドラマが並んでいた。

 理由は単純。当時は10代から20代の数が多く、世帯視聴率が獲れたからである。1970年の新成人は約246万人いた。2022年は約120万人だから、2倍以上である(総務省統計局)。

 世帯視聴率時代が続いていたら、少数派となっている現代の若者はテレビから相手にされなくなる怖れがあった。若者向けドラマはことごとく爆死扱いされたはず。個人視聴率時代になる前の2019年までTBSなどが2時間ドラマを放送していたのは、世帯視聴率の獲れる高齢者が好んでいたからである。

 若者向けドラマの救世主になったのは個人視聴率だった。視聴者の総人数や世代、性別が細かく出るから、スポンサーは世帯視聴率が低いドラマであろうが気にせずに提供できるようになった。

外部が世帯視聴率を使うのは不合理な話

 あまり知られていないが、ここ数年の恋愛ドラマで最も若者にウケたのは橋本環奈(25)が主演したTBSの昨年の春ドラマ「王様に捧ぐ薬指」(火曜午後10時)である。「新空港占拠」並みのコア視聴率があり、大ヒットとも言えた。

 ただし、やはり世帯視聴率は6%前後と低かったことから、爆死扱いを受けた。恵まれない作品となった。

 そんなダブルスタンダードの状態は間もなく終わるだろう。新聞は世帯視聴率離れが進んでいる。放送記者クラブ所属の専門記者のいる毎日、産経の両紙は視聴率ランキングの基準を世帯視聴率から個人視聴率に置き換えた。読売、朝日も個人視聴率と世帯視聴率を併記している。もはや世帯視聴率だけを記載する新聞はない。

 大体、テレビ局とスポンサーが使わない世帯視聴率を外部が使うのは不合理な話なのである。1962年に導入された世帯視聴率は矛盾が覆い隠せなくなった。特に極端な少子高齢化は致命傷だった。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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